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 大規模災害からの復旧・復興にはスピード感が必要です。人材を大量に投入する人海戦術で乗り切るのが通例でした。ところが、東日本大震災では人海戦術が十分に機能していません。象徴的なのが、復旧・復興工事で続出している入札不調です。建設会社の技術者も技能者も絶対的に足りないことが一因となっています。被害が東北3県を中心に広域に及び、津波被災地では高台移転を含むまちの再構築が必要になるなどして、復旧・復興事業が思うように進んでいない面もあります。

 日経コンストラクション7月9日号の特集は「人海戦術の現実」と題し、震災復興の足かせとなっている人材不足の問題に焦点を当てました。シリーズ企画「追跡 震災復興」の一環です。

日経コンストラクション2012年7月9日号特集「人海戦術の現実」から
日経コンストラクション2012年7月9日号特集「人海戦術の現実」から

 宮城県の土木一式工事の入札不調発生率は、2011年12月には4割を超えました。12年5月でも3割近くに及び、とりわけ小規模工事で多発しています。宮城県の土木一式工事における11年度全体の入札不調発生率は28%でしたが、予定価格5000万円未満の工事に限ると43%に上りました。

 建設会社の技術者不足対策として、国土交通省は復興JV制度を創設しました。被災地の県内企業と県外企業がJV(共同企業体)を組むことで、県内企業に限定していた工事入札にも県外企業が参加できるようにする仕組みです。ただし、復興JV制度に積極的に取り組む宮城県でも、予定価格1億円未満の工事は対象にしない方針です。宿泊経費などが負担となり、1億円未満の工事では県外企業の採算が合わないと言います。現在の復興JV制度には限界があるのです。

 しかも、復興庁が6月29日に発表した11年度の震災復旧・復興関係経費の執行状況では、14兆9243億円の歳出規模に対する執行率が60.6%にとどまることが明らかになりました。このうち、国土交通省(歳出規模2兆4186億円)の執行率は全体平均より低く、39.1%にすぎませんでした。復興事業の本格化が遅れているにもかかわらず、既に人材不足が顕在化しているわけです。迅速な復興のためには、地域要件の見直しや大ロットでの一括発注などの検討も必要だと思われます。日本の総力を挙げて被災地の復興に取り組む仕組みが必要ではないでしょうか。

 考えてみると、東日本大震災で展開しようとしているような大規模な人海戦術は、将来的には実行不能かもしれません。国内の人口は既に減少局面にあり、生産年齢人口の割合も徐々に低下していくと予想されています。建設市場の縮小に伴って建設業の就労者数も減少が続いています。東日本大震災の復旧・復興では、技術者不足を補うために60歳以上のシニア技術者が被災地に送り込まれていますが、それも引退したばかりの団塊の世代がいたればこそ。仮に10年後に南海トラフの巨大地震や首都直下地震が発生し、大きな被害に見舞われたら、東日本大震災以上に復旧・復興に手間取るのは目に見えています。

 まずは目の前の東日本大震災からの復旧・復興で人材不足を解消しなければなりませんが、次なる大災害を見据えると、建設業界に入ってくる若年層の減少を防ぎつつ、限られた人材でいかに対処するかを考えていく必要があると思います。