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東日本大震災直後、「啓開」という耳慣れない言葉がよく使われた。これは、応急復旧に先立ち、緊急に救援ルートを確保すること。国土交通省は道路の啓開を「くしの歯作戦」と名付け、地震発生から4日間で15の救援ルートを確保した。


岩手県宮古市の市街地での啓開作業の様子。2011年3月15日撮影(写真:国土交通省東北地方整備局)
岩手県宮古市の市街地での啓開作業の様子。2011年3月15日撮影(写真:国土交通省東北地方整備局)


 東北地方の沿岸部を通る国道45号が津波で寸断され、多くの地区が孤立した。それらの地区への救援ルートをいち早く確保するのが、道路の啓開の目的だ。

 内陸側には国道4号が通り、沿岸部の市街地との間をいくつもの道路が東西に結んでいる。啓開では、この東西に延びる道路を「くしの歯」に見立て、内陸部から沿岸部に到達するルートの確保を目指した。

 国土交通省東北地方整備局の本局でくしの歯作戦を担当したのが、道路部の林崎吉克道路調査官だ。「揺れが長かったので、直感的に『これは宮城県沖地震だ』と思った」と林崎調査官は振り返る。

 災害対応の担当者らは即座に、庁舎内の災害対策室に集まった。この部屋には前面に多数のモニターが設置され、各地の様子を映し出せるようになっている。地震発生の37分後には東北地整の防災ヘリが仙台空港を飛び立ち、津波の被害を受けた沿岸部の様子をリアルタイムで伝えた。

 だが、津波の映像とは裏腹に、現場からはそれほど大きな被災情報が入ってこなかった。「最初は、あまり被害がなかったのかなと感じた」(林崎調査官)。

 大災害の際、最初に入ってくる情報は、意外と小さな被害ばかりであることが多い。本当に甚大な被害を受けた地域には立ち入れず、被災状況の把握に時間がかかるからだ。