──従来の公共事業の枠組みでは、官民ともなかなか真似できないかも…。
山崎 最近はそうでもない。行政の担当者も変わってきていますよ。例えば、市民向けのPRやアンケート調査などで行政の印刷物とかウェブページというと、お堅くてひな形どおりといったイメージがありますね。行政内部で新人など若い人が、それを「格好悪い」とか「分かりにくい」と感じて先輩や上司に意見を言っても、かつては「そんなことに力を入れなくていい」と一蹴される方が多かっただろうと思う。
ところが今は、そうした若手の直言に先輩や上司が耳を傾ける気風が、行政内部でも広まってきているように感じます。特に、若手のすぐ上の層で顕著。ハードとソフトの両輪をうまく回転させないと、公共事業の本当の効果を得られない。官民を問わず、皆、その点に気付き始めている時代ではないでしょうか。
道路や橋、トンネルといった一般的な土木構造物でも、周辺住民の合意形成がカギになることがよくあるはずです。技術面で一番いい選択をして優れたものをつくっても、住民に「押し付けられた」という感情が残ると、「ありがとう」とは言ってもらえないでしょう。
少し手間や時間がかかりますが、市民の意見をしっかり聞いて、どのような意図でつくったのかをちゃんと説明する。それが、言わばソフトのマネジメントであり、これからはさらに重要になると思うのです。
──建設系の若手技術者や学生の間では最近、山崎さんの「まちづくり」のような仕事に大変人気があると聞きます。
山崎 今の若い人は、親の世代から「建設産業はこれからしんどいぞ」と脅かされ続けて育った世代だと思うのです(笑)。その制止を振り切って、この道に進んだ、あるいは進もうとしている。若い情熱で突き進む一方で、不安もあるでしょう。
専門の技術を身に付けようとしているなかで、例えば私たちのような仕事をしている人間もいると知り、「建設分野でソフト面からのアプローチを専門にやる人がいるんだ」と新鮮に受け取る。興味を持って近づいてきて、そこに面白さを感じ始めるのではないでしょうか。
──その傾向は技術者の卵として、ある種の「逃げ道」なのでしょうか。それとも、新たな「希望」なのでしょうか。
山崎 僕は「希望」と思いたい。公共事業の新たな可能性として。従来の枠組みを乗り越える“想像力”を持った仲間が、さらに増えてほしいと期待しているのです。