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「土木技術者はゼネラリスト」

 広野町は福島県の浜通り地方にあり、東京電力福島第一原子力発電所から二十数キロ離れている。東日本大震災では沿岸部が津波で被災したほか、原発事故で町内の放射線量が上昇した。

 全町民を対象に出された避難指示は、線量の低下に伴い12年3月末で解除。しかし、町民の大半は南隣のいわき市などに避難したままだ。住民基本台帳上で5191人いる人口のうち、今年6月の時点で町内に住んでいるのは、1048人に過ぎない。

 福島県は広野町を含む浜通り地方の復旧・復興をサポートするため、同地方の市町村に配属する任期付き職員を公募。尾田氏はこれに応募して、今年4月から同町建設課復興建設グループの職員となった。任期は1年だが最長で5年まで延長できる。帰還する町民が増えるように、町が進める復旧・復興の施策に助言や提言を行うのが主な役割だ。

 河川環境の専門家として知られる尾田氏だが、東北地方への赴任や阪神・淡路大震災への対応経験もあり、東日本大震災の復旧・復興に強い関心を抱いていたという。とはいえ、原発事故を伴う震災からの復興は、誰にとっても未経験の難題だ。

 70歳を過ぎてなお、尾田氏を駆り立てたのは土木技術者としての気概だった。「土木技術者は本来、地域全体や国家の在り方まで視野に収められるゼネラリスト。未知の分野でも臆することはない」。今は、町の内外で暮らす住民を訪ねて生活状況や復興に関するヒアリングを行うなど、多忙な日々を送る。

 役場で尾田氏と机を並べる復興建設グループの賀澤正・参事兼専門官は、「退官後のNPO法人での活動も長い人らしく、国を含む行政の力には限界もあることや、住民とともに復興を進める意義に対する見識の深さを感じる」と話す。