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地域の魅力が向上する復興へ

 広野町には震災以前から、町内を流れる浅見川の環境保全や活用に取り組むNPO法人「浅見川ゆめ会議」が活動を続けていた。尾田氏は町の職員として活動する一方で、ここにも早速、参加した。

「浅見川ゆめ会議」の機関紙「かじか通信」(資料:NPO法人「浅見川ゆめ会議」)
「浅見川ゆめ会議」の機関紙「かじか通信」(資料:NPO法人「浅見川ゆめ会議」)
上は浅見川沿いの道を歩く尾田氏(右)と、NPO法人でも町役場でも“相棒役”の賀澤氏(写真:日経コンストラクション)
上は浅見川沿いの道を歩く尾田氏(右)と、NPO法人でも町役場でも“相棒役”の賀澤氏(写真:日経コンストラクション)

 同NPO法人の事務局長も務める賀澤氏は、元建設省河川局長という経歴を尊重して、尾田氏を会費無料の名誉会員として迎えようとしたという。だが、尾田氏は断った。「祭り上げられるような立場にはなりたくないので」。あくまでも正会員として加入した。

 尾田氏がこのNPO法人に加入したのは、専門の河川に対する関心だけが理由ではない。復興を進めるための足掛かりにする狙いがある。

 尾田氏と賀澤氏の案内で浅見川のほとりを歩くと、川底に若アユが群れているのが見えた。上流へ行けば青森県の奥入瀬渓流に劣らない景観が展開するという。尾田氏は今年5月、そんな浅見川を称賛する文章をNPO法人の機関紙に寄稿した。「このような自然の豊かさは、町民が戻りたくなる町にするための切り札になり得るのではないか」と尾田氏は考えている。

 しかし、その浅見川でも原発事故の影響で河床土から放射性物質が検出され、河口には津波の跡が残る。「今度の仕事は長期的な視野が必要だろう」。そう語る尾田氏の引退は、まだまだ先のことになりそうだ。