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 政府の中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」(座長:富士通の秋草直之取締役相談役)は、東京都を流れる荒川の堤防が決壊したときの浸水被害を予測。1月23日に結果を公表した。洪水で川がはんらんすれば、81駅を含む約121kmの鉄道トンネルなどが水没する可能性があるという。

200年に1度の確率で発生する洪水によって、河口から21km上流の右岸堤防が決壊したときの浸水被害。72時間後の様子を示す。赤い部分が水没した路線を示す(資料:下も中央防災会議)
200年に1度の確率で発生する洪水によって、河口から21km上流の右岸堤防が決壊したときの浸水被害。72時間後の様子を示す。赤い部分が水没した路線を示す(資料:下も中央防災会議)

 荒川の整備に用いている200年に1度の確率で発生する洪水を想定。流域の平均雨量を3日間合計で約550mmとし、河口から21.0km上流の地点での流量が毎秒約1万4000m3に至った状態を予測した。水門や排水ポンプ場などの排水施設が稼働しないことや、下流の隅田川などが満杯になっていることも条件に加えた。

 洪水によって、河口から21.0km上流の北区志茂の右岸堤防が決壊。はんらんした水は堤防の決壊から約10分で、地下鉄南北線の赤羽岩淵駅に流れ込み始める。その後、地下鉄千代田線の町屋駅や日比谷線の入谷駅などからも路線内に流入が始まり、決壊から12時間後には丸ノ内線の大手町駅など66駅が浸水する。

 72時間後には17路線の97駅を含め、合計約147kmにわたって浸水する。このうち、17路線の81駅を含む合計約121kmの区間は、天井にまで水が達する水没状態になると予測している。

 さらに、霞ケ関駅や赤坂駅など44駅では、地上からの流入がなくても、路線から回り込んだ水で駅が浸水することもわかった。

 予測では、トンネルの坑口や駅の出入り口を高さ2mまでふさいだケースも計算した。ところが、浸水する区間は最終的に大差がなかったという。

 ただし、トンネルの坑口を完全に止水して、駅の出入り口を高さ2.9mまでふさげば、大手町や銀座、霞ヶ関駅など主要な地下駅の浸水を防ぐことができる。浸水の範囲も9路線14駅の約17kmの範囲に抑えられ、水没する駅もなくなる結果が得られた。

止水対策の一例。H形鋼と木板などを組み合わせて高さ3mの駅の出入り口をふさぐ
止水対策の一例。H形鋼と木板などを組み合わせて高さ3mの駅の出入り口をふさぐ

 被害予測の対象としたのは、東京メトロや都営地下鉄のほか、路線の一部を地下に持つJR京葉線など合計22路線の137駅。現状の駅の止水設備などを調査し、モデル化して計算した。例えば、駅の出入り口を高さ3mとし、止水板はステップの高さを含めて1mとして計算した。

 専門調査会は今後、水防対策や被害軽減策について検討する予定だ。