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日経コンストラクションは、土木分野におけるコンクリート構造物の劣化の実態や補修工事の実例、アセットマネジメントの基礎知識などを盛り込んだ書籍「長寿命化時代のコンクリート補修講座」を発行しました。本書に掲載した「失敗の実例」のなかから、間違いを犯しがちな補修の例と、注意すべきポイントについて紹介します。

 「床版の打ち替え工事中に桁が変形したので、すぐ現場に来てほしい」。打ち替え工事の施工者から、建設コンサルタントA社の技術者に連絡が入った。

 ある自治体が発注した鋼製鈑桁(プレートガーダー)橋のRC床版の全面を打ち替える工事でのことだ。この橋は合成桁を採用した道路橋で、1970年代に架設された。合成桁とは、鋼桁上のずれ止めを介して桁と床版とを一体化し、桁と床版の両方で車両荷重などを支える形式の桁だ。

 現場では、2車線の道路のうちの1車線を規制して床版を打ち替えていた。A社の技術者が駆けつけてみると、通行止めにした片側車線の床版を取り壊している最中に鋼桁の変形が生じ、橋は全面通行止めになっていた。桁の変形の修復は不可能だったので、変形した桁を撤去して新しい桁を架設し直し、その上に新しい床版を施工した。橋が通行可能になるまでに1カ月間を要した。

 床版打ち替え工事の設計を担当したのは、地元の建設コンサルタントB社だった。B社は当初、この橋の点検業務を自治体から受注していた。点検の結果、RC床版の下面に全面にわたって亀甲状のひび割れが発生しており、遊離石灰やさび汁の流出が見られたので、近い将来、床版が抜け落ちる危険性が高いと判断。B社は、床版全面を早急に打ち替える必要があると発注者に提言した。そして、設計変更で床版の打ち替え設計を委託された。

 発注者は、B社の設計に不備があったことが失敗の原因だと考えた。実際、A社の技術者が、既設の床版の撤去に伴って鋼桁にかかる応力を照査してみると、許容値を大幅に超えていた。

 設計に当たって、B社の技術者は床版打ち替え後の鋼桁の応力照査は実施。その結果、許容値を満たしていたので、主桁の補強は必要ないと判断した。しかし、床版の打ち替え工事中の状況を想定した応力照査はしていなかった。

 片方の車線に車を通しながら反対車線の床版を撤去すると、鋼桁の上フランジに大きな曲げ圧縮力が作用する。この橋は合成桁だったので、床版を撤去したとき、鋼桁だけで荷重を支えきれなかったのだ。