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日経コンストラクションは、土木分野におけるコンクリート構造物の劣化の実態や補修工事の実例、アセットマネジメントの基礎知識などを盛り込んだ書籍「長寿命化時代のコンクリート補修講座」を発行しました。本書に掲載した「失敗の実例」のなかから、間違いを犯しがちな補修の例と、注意すべきポイントについて紹介します。

 地下に建設したポンプ場の側壁にひび割れが生じ、ひび割れから漏水が発生。表面塗布工法を用いてひび割れを補修したところ、一時的に漏水は止まったが、しばらくたつと再び同じ個所から漏水してしまった。

 ポンプ場の側壁は、下の図のように地盤に接しており、側壁の外側に防水は施されていなかった。地下水位の高い場所だったので、ポンプ場を建設する際には、あらかじめディープウエルによって水位を下げてから側壁のコンクリートを打設した。

 側壁は、厚さが1.5~2.0mのマスコンクリート。温度ひび割れが生じないように、低発熱タイプのセメントを使い、配力鉄筋の量を増やすなどの対策を講じていた。しかし、壁面の数カ所に、側壁を貫通する温度ひび割れが生じた。コンクリートの水平打ち継ぎ目の処理は適切に行われていたが、特別な止水対策は施していなかった。

 ポンプ場が完成して数カ月が経過してから、これらの温度ひび割れや水平打ち継ぎ目などから水がしみ出しているのが見つかった。ポンプ場の管理者は、ひび割れや打ち継ぎ目などを補修することにした。

 補修には、ひび割れに浸透して硬化する無機質セメントを採用。ペースト状にしたセメントを、こてを使ってコンクリートの表面に塗布した。すると、ひび割れは埋まり、漏水を止めることができた。

 ところが、補修して数カ月たつと、同じ個所から再び水がしみ出し、塗布したセメントが溶出して側壁の下の排水溝に流れ出していた。どうやら、セメントの一部が硬化する前に地下水によって押し流され、ひび割れを完全に埋めることができなかったようだ。

 補修を実施したのは地下水位が比較的低い渇水期で、再漏水したのは雨期に入ってからだった。渇水期は地下水圧が小さく、ひび割れが完全にふさがれていなくても漏水せずに済んだ。地下水位が上昇して水圧が高まったことで、残ったすき間から再び漏水してしまったのだ。