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水圧がかかる際は注入工法を採用

このケースについて、コンクリート構造物の補修経験が豊富なC&Rコンサルタントの小野定氏は次のようにみる。

 事例では、漏水を止めるために、水圧の作用する面の反対側、つまり側壁の室内側にセメントを塗布している。このように、水の流れに逆らって材料を浸透させるのは、物理的に極めて難しいと考えられる。

 それにもかかわらず表面塗布工法を採用したのは、ひび割れが側壁を貫通していたことや躯体が地下水位よりも下にあることを確認していなかったからではないか。さらに、漏水によってひび割れ付近が湿潤状態にあったことを重視していなかった可能性もある。

 材料メーカーが作成した技術資料には、材料を使える現場の条件が示されているので、まずは条件を確認し、その現場で使えるか否かを判断する必要がある。ただし、なかにはどんな条件でも効果が得られるような書き方をしているものも見受けられるので注意が必要だ。

 補修計画の立案や工事を担当する技術者は、メーカーが作った資料をうのみにするのではなく、材料の特徴を技術者自身が理解し、その現場で使えるか否かを十分に検討してから材料を選ぶことが重要だ。

 では、どんな方法を使えば再漏水を防ぐことができたのか。表面塗布工法では補修が困難なので、ひび割れ注入工法を用いるべきだ。壁面から直接、材料を注入すると水の流れに逆らうので、材料が完全に充てんされない恐れがある。

 そこで、ひび割れや打ち継ぎ目の面と交差するような注入孔を削孔し、ひび割れなどの内部から材料を注入するとよい(下の図を参照)。

 注入効果を高めるためには、できるだけ地盤に近い位置でひび割れなどと交差するように注入孔を削孔する。孔の間隔は20~30cm程度。ひび割れなどの幅が小さい場合や大きな水圧が作用している場合は、目安として0.5N/mm2以上の比較的高い圧力で注入するのが望ましい。

書籍「長寿命化時代のコンクリート補修講座」には、図や写真とともに、さらに詳しい解説を掲載しています。

<訂正> 「補修後に再漏水した側壁の概要」の図中、初出時に「温度ひび割れ」としていた部分を「水平打ち継ぎ目」に訂正します。また、「望ましい補修方法」の図中、初出時に「ひび割れ」としていた部分を「打ち継ぎ目」に訂正します。それに伴い本文の記載も変更しました。(2010年7月26日18時20分)

長寿命化時代のコンクリート補修講座

長寿命化時代のコンクリート補修講座

定価:2940円(税5%込み)
日経コンストラクション(編)
発行日:2010年5月31日

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