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 深い谷部に橋を架ける。橋台を構築する場所まで工事用道路を仮設しようとすると、斜面の木を伐採する必要がある。自然改変を最小限に抑えるために、ケーブルクレーンを採用した。運搬効率は高くないが、全体の工程には影響しない。

A1橋台の上側から、固定支保工で架設した桁を見下ろす。コンクリートは配管で圧送したが、そのほかの資材は全てケーブルクレーンで運び込んだ。8月24日撮影(写真:大村 拓也)
A1橋台の上側から、固定支保工で架設した桁を見下ろす。コンクリートは配管で圧送したが、そのほかの資材は全てケーブルクレーンで運び込んだ。8月24日撮影(写真:大村 拓也)

 山梨県南部町で建設中の中部横断自動車道の田中川橋は、両側が急斜面の谷に架かる橋長210mのPC(プレストレスト・コンクリート)3径間連続ラーメン箱桁橋だ。谷底を流れる田中川のそばには、柱頭部を含め高さ41.5mのP2橋脚がそびえる。その一方で、斜面の上にあるP1橋脚は、桁高を合わせても高さ9m程度しかない。

 このように地形が複雑な現場で、ケーブルクレーンが使われている。その活用範囲は、斜面上への重機の搬入から掘削土の搬出、橋脚や橋台、箱桁の構築に至るまで多岐にわたる。上下部一体で設計・施工を担当する三井住友建設の土木本部土木設計部PC設計グループの永元直樹次長は次のように説明する。

 「斜面の上にある施工箇所まで工事用車両が直接、行き来できるようにするには、斜面上の木を伐採してつづら折りの工事用道路を設ける必要があった。ケーブルクレーンならば、自然改変を大幅に減らすことができる」。

 また、永元次長は「仮設桟橋に使用する資材の運搬をなくし、工事用車両の出入りを少なくすることで、地元住民の負担にも配慮した」とも言う。

 工事を発注する国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所工務第二課の荒川正秋課長は、「工事用モノレールで資機材を運搬することを想定していたが、1回に運搬できる量が少ない。ケーブルクレーンは合理的に山の上に運ぶことができる方法だ」と話す。

 三井住友建設では、1970年代まではPC橋の工事でもケーブルクレーンを多用していたが、現在では、アーチ橋の架設工事で使う程度だという。

 使用するケーブルクレーンの吊り上げ能力は15tだ。A1橋台とP1橋脚の間に作業構台を設ける際に使用した支持杭の打設機の重量が14tであることに応じて決めた。

 これに伴い、土の運搬には容量5m3のバケットを使用した。永元次長は「ダンプトラックならば、5.5m3の土をヤードまで5分程度で運搬できる。しかし、ケーブルクレーンだと1サイクル20分程度かかる。工事用道路があった方が効率はいい」と明かす。

[現場概要]
●名称=H21中部横断田中川橋橋梁工事
●施工場所=山梨県南部町楮根
●発注者=国土交通省関東地方整備局
●詳細設計者=三井住友建設(管理技術者:永元直樹)
●施工者=三井住友建設(現場代理人:田中敬吾、元請けの技術者数:5人)
●主な専門工事会社=生田建設(土工事、足場支保工事、コンクリート打設)、日特建設(深礎杭)、加藤工業(鉄筋工事)、丸長工務店(型枠工事)、国土(張り出し架設)、亀田組(固定支保工架設)
●工期=2010年3月~13年3月
●工費(契約金額)=12億7155万円
●入札方式=総合評価落札方式による一般競争入札
●予定価格=13億8699万7500円