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 連載の第5回は、工事部長や工事課長としていかに効果的に現場代理人を育成するかについて考えてみた。しかし、現実にはそこで働くだけで人が育ってしまう会社がある。一方、その会社で働くだけで人が腐ってしまい、辞めてしまう会社もある。連載の最終回となる第6回は、「人が育つ組織」をつくるにはどうすればよいかを考えてみよう。

 プロ野球で、全く芽の出なかった選手がチームを変わった途端、活躍する例がある。逆に活躍していた選手がチームを変わった途端に成績が悪くなる例も多い。これは「人が育つ組織」と「人が腐る組織」の違いだ。

 インキュベーターとはふ化器のこと。卵をインキュベーターに入れるとひよこにふ化する。つまりインキュベーターは、卵をふ化させる環境を備えているということだ。有精卵でありさえすれば、インキュベーターはよほどのことがない限り、ひよこにふ化させることができる環境を有している。

 インキュベーターが卵をふ化させるように、その組織にいるだけで、技術者を一流の現場代理人に“ふ化”させる組織にするには、どうすればよいだろうか。

育成なくして指導なし

 人を育てるには、二つの要点がある。一つは「育成」である。「育成」とは、人をやる気にさせることである。そしてもう一つは「指導」である。「指導」とは知識や経験を身に付けさせることだ。

 「育成なくして指導なし」という言葉がある。まずはやる気にさせて、その次に知識や手法を身に付けると、伝えたことがその人の力になるということだ。逆にやる気のない人にいくら知識や手法を与えても、馬の耳に念仏になってしまう。

 人をコップに、知識や経験を水に例えると、「育成」とはコップを上に向けること。「指導」とはそのコップに水を注ぐことだ。コップが下を向いていれば、決して水は入らない。「育成なくして指導なし」とは、まずはコップを上に向けてその後、水を注ぐことであり、これが人材育成の要諦である。

 以下では、これまでも取り上げてきたN建設の事例を交え、人が育つ組織のつくり方について解説しよう。同社は社員数が50人、売上高が25億円の地場の中小建設会社である。