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 会計検査院は2011年度の決算検査報告で、農林水産省の補助事業で沖縄県が金武町に造った貯水池の設計ミスを指摘した。着工後に設計を変更して貯水池に管理用の通路を設けたが、設計変更に伴ってかさ上げした擁壁背後の盛り土の土圧を再評価しなかった。その結果、擁壁の一部で強度不足が生じた。

 設計ミスを指摘された貯水池は、農業用水を確保する目的で、掘削した地盤の上に逆T形の擁壁などを設置して造った。擁壁の高さは3.9~4.5mで、底版の幅は2.0~4.7m。

 擁壁背後の地面の高さが一定でなかったので、擁壁の天端(てんば)を基準に背後の盛り土の高さを天端より1m下方、50cm下方、天端と同じ――の3通りに想定。それぞれの盛り土の高さに応じ、擁壁に作用する応力を計算して設計した。

 例えば、天端より1m下方まで背後を盛り土する擁壁については、たて壁の背面側とかかと版の上面側に直径13mmの主鉄筋を25cm間隔で配置すれば安全だと確認して設計した。

沖縄県が貯水池に採用した逆T形の擁壁の概要。背後の盛り土は、擁壁の天端を基準に1m下方など3通りの高さを想定して設計した(資料:下も会計検査院)
沖縄県が貯水池に採用した逆T形の擁壁の概要。背後の盛り土は、擁壁の天端を基準に1m下方など3通りの高さを想定して設計した(資料:下も会計検査院)

 工事を始めた後、貯水池内に維持管理用の通路を設けるよう設計を変更した。併せて、通路の進入口に隣接する擁壁の背後の盛り土を、8.5mにわたって高さを変更。同区間の盛り土の高さを、当初の擁壁の天端より1m下方から50cm下方までかさ上げした(下の図を参照)。

 擁壁の背後の盛り土をかさ上げすると、擁壁に作用する土圧は増加する。ところが、設計を変更したにもかかわらず、沖縄県は擁壁に作用する土圧を再評価しないで、当初の設計のまま施工していた。

貯水池の概要。上の図は当初に設計した貯水池で、下は管理用の通路を設けるよう設計を変更した後の状態。通路の進入口に合わせ、隣接する擁壁の背後の盛り土を当初より50cm、かさ上げして施工した
貯水池の概要。上の図は当初に設計した貯水池で、下は管理用の通路を設けるよう設計を変更した後の状態。通路の進入口に合わせ、隣接する擁壁の背後の盛り土を当初より50cm、かさ上げして施工した

 そこで、会計検査院が現況に基づいて擁壁の応力を計算すると、設計を変更した8.5mの区間で主鉄筋に生じる引っ張り応力度が許容する範囲内に収まっていなかった。

 許容値は常時が157 N/mm2で、地震時が264 N/mm2。 これに対して、たて壁の背面側の主鉄筋に生じる引っ張り応力度は常時が217.2N/mm2で、地震時が296.6 N/mm2。かかと版の上面側でも常時に224.9 N/mm2、地震時に307.1 N/mm2の応力度が生じ、いずれも許容値を上回った。

 このため、進入口に隣接した長さ8.5mの擁壁は所要の安全度が確保されていない状態にあると会計検査院は指摘。この区間の工事に支出した約201万円の国庫補助金の支出は不当だとした。