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写真家・篠山紀信氏による写真集「現場紀信」(2012年12月25日発行、日経BP社刊)では、篠山氏が撮影した延べ15の現場の写真を収録した。連載最終回の第6回で取り上げるのは、昨年5月の開業以来、多くの観光客でにぎわう東京スカイツリーだ。

篠山氏は建設中の東京スカイツリーを中から外から、都合4回の撮影に臨んだ。建設中から現場周辺はカメラを構える人であふれたが、みな一様に、スカイツリーをクリアに撮れる場所を探す。しかし篠山氏は、そうした「撮影スポット」は素通りする。電線に“緊縛”されたスカイツリー、展望台から養生フィルム越しに見た外界の風景など、独自のアングルを探し当てた。


写真集「現場紀信」―東京スカイツリーI―より(写真:篠山紀信)
写真集「現場紀信」―東京スカイツリーI―より(写真:篠山紀信)

 映画「三丁目の夕日」の60年代、東京のシンボルは東京タワーだった。バブル絶頂の80年代は新宿の新都庁舎、21世紀を迎える2000年代初めはレインボーブリッジ。不思議と西や南の東京だった。

 そして今、初めて東の東京にシンボル、東京スカイツリーが建つ。

 下町の路地や長屋の平たい情緒の世界に、突如として世界一高い電波塔が縦に天を刺す。

 この一本が突き出ることで、地場に磁場が起こり、そこに住む人の心をざわめかせる。

 早速商魂逞しく、寿司屋がタワー寿司セットを、喫茶店ではタワーアイスが売り出される。

 土日ともなると、一目見ようと見上げる見物客であふれ返り、塔の足元ではカーブミラーで自分たちと塔を写真に写すカップル。川面に写る逆さタワーが見える橋上では、車道に見物客がはみ出しては危険と鉄柵がつくられる。

 狭い道路から見上げれば電信柱の電線が塔を緊縛するように絡み付き、人力車に乗る新郎新婦も後ろにタワーがあるだけでなぜか晴れがましい。

 結構なことじゃないですか、一本の近未来を予感させる鋭利な塔が建つだけで巻き起こる不思議なパワー。

 東京スカイツリーは地元にどんなエネルギーを注いでくれるのだろうか。

篠山 紀信


写真集「現場紀信」―東京スカイツリーI―より(写真:篠山紀信)
写真集「現場紀信」―東京スカイツリーI―より(写真:篠山紀信)