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2回目の繰り越しは無理

 春日井市が補助金を受けるための移転期限は、12年度末から13年度末へと既に1回延長していた。国が財政法に基づいて補助金の1回目の繰り越し(明許繰り越し)を認めたためだ。2回目の繰り越しも制度上は可能だが、自然災害の発生や補償対象の住民の死亡などを理由とする「事故繰り越し」に該当する場合に限られる。

 市によると、移転先となる新居の建設が遅れたのは、敷地が市街化調整区域にあることなどが理由で建築確認に手間取ったためだという。財務省が公開している事故繰り越しの事例集には、移転先建物の設計の遅れで住民が引っ越しを延期したことを理由とする事例もある。しかし、これは住民の入院と建築基準法改正による建築確認審査の混乱が影響した非常にまれなケースだ。

 春日井市の担当職員は、今回のケースでは2回目の繰り越しが認められないと考え、補助金を受けるための移転完了検査調書で、13年度末までに移転が完了したと虚偽の記載をした。愛知県が14年7月に移転完了検査を行った際に、その住民がまだ移転していなかったことから、市の不正が発覚した。移転が実際に完了したのは14年11月だった。

 市は15年2月、担当職員2人をそれぞれ減給処分とした。その後、補助金の返還のほかに必要となった加算金419万円について、地方自治法243条の2第3項に基づき、一部の賠償を2人に命じた。

悪かったのは担当職員だけか

 ただ、市は補助金の返還と加算金の納付で損害を受けたとしているが、その補助金は本来、交付されなかった可能性が高いものだ。

 住民の移転の遅れで公共事業が予定どおり進まないケースは全国でも珍しくない。それによって自治体が補助金を失った場合、その責任はいったい誰にあるのか――。硬直的な補助金の運用を批判する声がある一方、計画的に移転を進められなかった自治体側の問題とする見方もある。あるいは、移転が遅れた住民の責任を問う意見もあるかもしれない。

 虚偽の記載をした職員に責任があるのは当然だが、そうした不正に手を染めさせた構造的な問題にも目を向ける必要がある。