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建築家の設計思想を可視化するBIM時代の職人
高品質な「デザイン・ビジュアライゼーション」を代行


建物の3次元モデルを使って設計、施工を進めていくビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)の普及により、建築家の設計思想などを施主や周辺住民、施工者などのステークホルダーにプレゼンテーションする際のレベルも、以前よりぐっと高まっています。この潮流をビジネスチャンスとみて、新会社設立にチャレンジしているのが冨田和弘さんです。

彼が手がけようとしているビジネスは、建築家の建物に対する思いから、風や熱環境などの解析結果に至るまで、建物の設計に関するあらゆるものを可視化し、わかりやすく表現する仕事です。設計内容を、ステークホルダーに対してわかりやすく、印象に残るようなプレゼンが行えるように、高品質のパース画像やアニメーション映像、プレゼンソフト、プレゼンボード、そしてパンフレットなどの作成を丸ごと請け負うというものなのです。

その作業のもととなるのが、建物のBIMモデルや3次元CADデータです。プロジェクトの様々な段階で、建物の3次元モデルデータを最適な方法で加工することにより、完成後のイメージを可視化する「デザイン・ビジュアライゼーション」という分野の職人と言ってもいいでしょう。


3月にデザイン・ビジュアライゼーション分野の新会社を設立する冨田和弘さん(左)と原広司+アトリエ・ファイ建築研究所の設計を元に作成した十日町ステージ「越後妻有交流館・キナーレ」のCGパース(右)(以下のCG画像:冨田和弘氏)
神奈川県厚木市に建設された日産自動車の「プロジェクト・イマジネーション・ファクトリー」のCG
エジプト博物館コンペの作品(設計:原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、大成建設)
北京オリンピックスタジアム(左)と、しもきた克雪ドーム(右)のコンペ作品(設計:2作品とも原広司+アトリエ・ファイ建築研究所、大成建設)


「例えば、建築家がコンペに応募するとき、これまではパース作成者、アニメ作成者、DTPクリエーター、印刷会社、ライターなどと個別に打ち合わせし、煩雑な作業に多くの時間を取られていました。私がこの作業全体の窓口になることで、建築家の負担は大幅に軽減し、本来の設計業務に集中できるようになると考えたのです」と、冨田さんは語ります。

冨田さんは大学院まで建築を学び、卒業後は大成建設に入社しました。情報システム部でCADの開発に携わったり、CGデザイン室でローマの水道橋などのアニメーションを作ったりし、作品がNHK番組で放映されたこともありました。

国内外のコンペCGやアニメーションを制作するなかで、建築家の原広司氏との出会いもあり、同氏とのコラボレーションも重ねていきました。

大学卒業後はCAD開発やCG作成など、IT技術者のような仕事がほとんどでしたが、数々のCGを作成していくうちに「建築空間を絵にするのが好きになってきました。原氏との打ち合わせは夕方から翌朝まで続き、その中でCGに関する話は30分くらいしかありませんでしたが、最後まで残って話を聞くのが楽しかったのです」と冨田氏は振り返ります。

ある日、なにげなく作った1枚のパースに対して原氏は「これこそ、自分の設計思想を表した作品だ」とほめてくれたそうです。こうしたことが冨田さんの自信となり、建築プレゼンのエージェントという新しい道を歩み始めるきっかけになったのでしょう。


デザイン・ビジュアライゼーションを行うときのイメージ決定プロセス(資料:冨田和弘氏)
2次元CAD、3次元CAD、CGなどのデータを加工し、様々な成果物を生み出していく


ムービー作品の例
3次元モデルを元にムービー作品を作る仕事も多い。左はバルセロナ国際見本市(設計:伊東豊雄建築設計事務所)、右はオペラホールの例


プロジェクト段階に応じアウトプットを使い分ける
ウォークスルーを使ってVIPの意思決定を引き出す


BIMや3次元CADの導入が進んできたことが、建築エージェントというビジネスが行いやすくなったという面もあります。2次元の平面図、立面図、断面図を元に設計を行っていたときは、パースを作る段階になってから平面と立面の整合性に矛盾があることが発見され、再度、設計に戻ってやり直すことがよくありました。

「3次元モデルで設計を進めると、整合性の問題はすでにクリアされており、新たに3次元データを作り直す必要もありません。以前に比べて無駄な作業がなくなりました」と冨田さんは説明します。

CGやパースというと、現在の技術を使うと写真と見分けがつかないほど、リアルな作品を作ることも可能です。しかし、プロジェクトの段階に応じて精度や品質を使い分けないと、思わぬところで逆効果を生んでしまうこともあります。

「10年前くらいに、ある裁判所の建物の完成予想図を非常にリアルに作ったことがあります。その建物が完成した後、発注者は『ここの木目が完成予想図と違う』と言ったのです。必ずしもフォトリアルでホンモノそっくりのパースがいいのではなく、ケースバイケースで意図的に表現を崩す必要もあると感じました」(冨田さん)。


プロジェクトの初期段階。3Dモデルのデータを基に手描きイラスト風に仕上げたもの。詳細な材質感などはあえて表現せず、色も別レイヤにして塗りかえやすいようにしている 白色とガラス程度で表現した建物の3Dモデル。建物の外観などのデザインを検討する。模型代わりに使えるもの
材質感までを忠実に再現して作成したフォトリアルなCG(設計:原広司+アトリエ・ファイ建築研究所)


デザインビジュアライゼーションのおかげで、発注者の意思決定をスピーディーにすることもあります。銀座のあるブランド店舗の設計では、店舗だけでなく周囲の街並みも3次元モデルにして、ウオークスルーできるようにして打ち合わせに持っていきました。

「ある交差点を渡っているところから、その店舗を見た画面を映したとき、社長さんが『こっちからも見られるように建物のロゴを増やそう』と言ったのです。その場の5分とか10分とかで設計変更が決まりました。もし、ウオークスルーでなく視点の決まっているCGだったら、作り直して再度の打ち合わせまで、1~2週間はかかっていたに違いありません」と冨田さんは語ります。

外資系企業のトップと面会して、直に打ち合わせできるチャンスはそう多くはありません。一回の打ち合わせの間に合意形成を行いながら、多くの意思決定が得られると、プロジェクトもスムーズに進むでしょう。



風の流れや温熱環境もわかりやすくプレゼン
3次元CADやBIMの普及で生まれる新ビジネス


デザインビジュアライゼーションが威力を発揮する場は、意匠の検討だけにとどまらず、ビル周辺や室内の風の流れや、温熱環境などの解析結果をわかりやすく説明する時も使われます。

「技術者は解析結果に満足してしまうと、せっかく3次元で解析しているのに平面や立面というありきたりな断面で結果を表示した資料を作ってしまいがちです。このような技術的なシミュレーション結果でも、わかりやすいアングルというものがあるはずです」と冨田さん。


気流や熱環境などエンジニアリング的な解析結果を表現するときにも、見る方向や角度を工夫してわかりやすく表現する


施工が進んで内装や外装材などを決める時も、小さな建材のサンプルだけを頼りに選んでしまうと、実際に室内全体や外壁全体に広く張ったとき、予想と違ったインテリアや建物のイメージになってしまうことがあります。このような現象を「面積効果」と言いますが、この効果を考慮して違和感のない建材選びにも、デザインビジュアライゼーションは効果を発揮します。

BIMが普及すると、設計作業が合理化されて仕事がなくなると考えている設計者も多いかもしれませんが、一方では冨田さんのように設計内容を可視化し、高品質にプレゼンテーションするというこれまでになかった建築関連ビジネスも生まれつつあります。建物の完成後を映画のように表現してライフスタイルを提案したり、空調、電気設備などの消費エネルギーやCO2排出シミュレーションを行ったりするなど、「建築界のタイムマシン」としてのBIMに着目するといろいろなビジネスチャンスが発見できるのではないでしょうか。

(「建設3次元まつり2009」の大河ストーリーは原則、毎週水曜日に更新します)