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社内の技術を掘り起こすプラットホームに

 こうした活動を通じて同社のBIMは、設計ツールだけではなく技術情報を社内で共有するためのプラットホームとしても機能し始めました。

 「建物内雷電磁環境シミュレーションシステム(T-Lightning Internal)」は、その一例です。建物のBIMモデルから、電流の通り道となる鉄骨部分だけを抜き出して、雷電流や電磁界などを解析するシステムです。「建物のBIMモデルを解析に使えるようになってから、社内外からも解析の依頼がじゃんじゃん来るヒット製品になりました」(高取さん)。

 このほか、開発中の「立体設計図システム(仮称)」は、施主自身がBIMモデルの内容を見たり、壁紙の種類を比較検討したりできるように、データとビューワーソフトを一体化する技術です。もともと、技術研究所で開発されていた技術ですが、BIMによって設計実務のツールに大変身しようとしています。 

BIMモデルデータ(左)と、そのデータを利用して解析する建物内雷電磁環境シミュレーションシステム(右)(資料:大成建設)
施主自身がBIMモデルを操作して設計内容を確認できる「立体設計図システム(仮称)」。ウォークスルーにゲームコントローラーを使うのが特徴(写真:家入龍太)

 これまで特別な知識を持つ研究者や専門家だけが使っていた解析ツールや技術を、BIMと連携させることで社内のノウハウとして共有し、幅広い業務に生かせるようになったのです。

 2009年9月に開催されたBIMの仮想コンペ「Build Live Tokyo II」(主催:IAI日本)に、同社は「T’s kitchen」というチームを組んで初参加しました。48時間という短時間で既存マンションの建て替え計画を作成する課題への対応は、まさに同社の組織力をフルに発揮するための実践的訓練と言ってもよいものでした。

 横浜市戸塚区にある技術センターを本部に、東京・新宿の本社やセコムなどとインターネットでコラボレーションしながら、技術研究部門でつちかった技術や他社が持つノウハウを統合する組織力を見せつけるものでした。

 例えば、斜線制限を満足しながら、複数のマンション棟の位置や各戸の日当たりなどを最適に設計するため、「遺伝的アルゴリズム」という理論を組み込んだプログラムを使いました。また、設計内容や通風性などの結果は、建物の内外を立体的に見られる3次元バーチャル・リアリティーシステムで検証しました。

2009年9月、仮想コンペ「Build Live Tokyo 2009 II」に参加したときの様子。上段左は、横浜・戸塚区の技術センターの一室に集まったチームメンバー。上段右は、実物大3次元バーチャルリアリティーによる設計内容の検証。下段左は、熱流体解析のよる風の流れの確認。下段右は、遺伝的アルゴリズムによる建物配置などの検討(写真:家入龍太)

 大成建設のような巨大な組織で、短時間にBIMが根付いた理由を、中村さんはこう総括します。「BIMを組織のツールとして導入することができたのは、組織として取り組み、トップのリーダーシップがあったからです」。BIMは単なるソフトウエアや道具ではなく、建設会社の経営戦略にかかわるツールであることを示唆する言葉でした。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。

家入龍太の公式ブログはこちら。

http://www.ieiri-labo.jp/