ツイッターで新発想の仮設住宅を提案
「エクスコンテナ・プロジェクトを立ち上げました。被災地に必要な家の姿を考え、実際にそれを届けるべく活動します。ご支援よろしくお願いいたします!」──3月28日、インターネットの「ツイッター」に建築家の吉村靖孝氏は書き込んだ。
このプロジェクトのためツイッター上に開設したアカウント「ex_container」には、3日間で400人ものフォロワーが集まった。このプロジェクトために立ち上げたウェブサイト「エクスコンテナ・プロジェクト」は、ネットで集まった協力者の手で英語や中国語にも翻訳された。
同氏は海上輸送コンテナと同じサイズで作ったプレハブ住宅「エクスコンテナ」を開発し、横浜のホテルとして建設した実績がある。ISOコンテナ規格に基づいた外形、寸法だが日本国内で常設の建築物として用いることができるように法規に基づいて再設計したものだ。
内外装を含めて海外の工場で生産して、海上輸送コンテナと一緒に積み上げてコンテナ船で簡単に輸送。トレーラーで必要な場所に運び、簡単に設置できるようにしたのが特徴だ。
海外生産のメリットはコストダウンにあるが、災害時には海外工場の力を借りることにより、スピーディーに住宅供給ができることもポイントだ。
3月11日に発生した東日本大震災の後、ツイッター上では吉村氏に対し、「CCハウスの廉価版を仮設住宅にしてほしい」と期待する書き込みが相次ぎ、その声に押される形で海運コンテナ規格の仮設住宅「エクスコンテナ」を被災地に届けるプロジェクト「エクスコンテナ・プロジェクト」がスタートした。
CCハウスとは「クリエイティブ・コモンズ」という著作権ライセンスの考え方に基づく建築のこと。作者が著作権を保持しつつ、「改変自由」と明記したうえで住宅の図面一式を販売する。購入者は自由に図面を改変することで個性ある住宅が建てられる仕組みだ。このCCハウスのコンセプトを適用して、2棟一組で組み立てるエクスコンテナを仮設住宅だけでなく、常設住宅としても生かせるプランが誕生した。
仮設住宅の入居期間は2年以内と定められている。その後は撤去し、廃材となる場合も多い。エクスコンテナプロジェクトの根底には、その無駄をなくしたいという考えがある。常設の建築物として確認申請が通すことを前提とした仕様にして、仮設住宅として使った後は移築して常設の建築物として使おうという考えだ。
災害救助法に基づく仮設住宅の価格の上限は238万7000円と決められている。しかし、使用期間の2年間で割ると月当たり12万円を超え、さらに撤去費用も上乗せされる。それに伴って大量の廃棄物も出る。
エクスコンテナの建設費は規模によって300万~500万と仮設住宅よりもやや高めだが、使用終了後に安価な常設住宅として再利用する仕組みを構築できれば、ライフサイクルコストでは有利になる可能性もある。廃棄物処理コストも少なく、環境配慮という点でも有効だ。
これまでの仮設住宅とは異なる新しいコンセプトであるため、従来の制度下での大量供給は難しい。吉村氏はまず、仮設住宅の原型を1棟造りたいと考え、ネット上で寄付を募っている。この原型を国や地方自治体、支援団体などの関係者に公開し、エクスコンテナへの理解を深めることがその目的だ。