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 「止めてくれー」「収まってくれ-」──動画投稿サイト「YouTube」で公開されている動画は、東日本大震災の津波が岩手県大船渡市の町を徐々に飲み込んでいく様子が克明にとらえていた。撮影者が思わず発した悲鳴もリアルに記録されている。

YouTubeで公開されている動画「東日本大震災からこうして避難・そして大津波」(資料:齊藤賢治氏)

 「東日本大震災からこうして避難・そして大津波」と題するこの動画は、3時19分ごろの状況から始まる。「現在、大津波警報が発令中です。沿岸住民は直ちに高台に避難してください」という避難指示が拡声器から鳴り響く港町の雰囲気は当初、落ち着いていた。

 その直後、海面は徐々に上がり、1分40秒後には船着き場からあふれ始める。やがてクルマやクレーン船が流され始め、4分後には海水は高台近くの堤防を越えた。それから1分もたたないうちに道路が川のようになり、自動販売機や家が流され始める。そして、見る見るうちに町は水没していった。

 津波の動きを8分14秒にわたって記録したこの動画は、見る者に津波の時間的な変遷を余すことなく伝えている。

静かだった港町が数分の間に海中に没していく過程をノンストップで記録した(資料:齊藤賢治氏)


YouTubeで公開されている「東日本大震災からこうして避難・そして大津波」

 この動画を撮影したのは、同市内で「かもめの玉子」を製造、販売するさいとう製菓の専務取締役、齊藤賢治氏だ。

 齊藤氏は当初、自分が意識しないでもらした悲鳴などが記録されていたため公開をためらっていたという。

 しかし、4月13日、「津波の怖さ、早い避難が大事であること、こんな時には適切な判断が生きることにつながるということをを知っていただければ」(齊藤氏)という思いで公開に踏み切った。同氏はオリジナルの動画に、その後の被災地の写真などを含めてDVDにまとめた。教育関係者などから希望があれば提供している。

動画を撮影、公開した齊藤賢治氏(左)と教育用に作成したDVD(右)(左写真:齊藤賢治氏、右写真:家入龍太)

 公開以来、この動画は注目を浴び、5月7日現在で82万件以上のアクセスがあり、見た人からは260件ものコメントが寄せられている。

 「この動画が一番時系列的に津波の恐ろしさを伝えている」、「津波の進み方がよく分かった」、「将来、海の近くに住む可能性がある子どもたちに見せたい」など、海が数分間で静から動へと変わり、破滅的な破壊力をもたらす津波の恐ろしさが分かったことを評価するコメントがほとんどだ。

 齊藤氏はこのほか、地震動が収まらないうちに津波の到来を予感。職場の社員に「津波が来るから避難」と呼びかける様子を自分のスマートフォンで撮影した「東日本大震災からこうして避難」と題した動画もYouTubeで公開している。海岸部で地震が起こったとき、どのように行動すべきかが、自分のことのようにリアルに感じられる。