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海外からの支援の気持ちを生かせなかった自分を反省

 講演の依頼を受けた時に私の脳裏に浮かんだのは、地震直後に米国など海外の建築家から受け取ったメールのことだった。そのほとんどはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のユーザーであり、「被災地のために自分にできることがあったら言ってほしい」という内容が多かった。

 BIMを使った仮想コンペ「Build Live Tokyo」や「BIMStorm」の手法を使うと、課題さえはっきりすれば世界中どこからでもインターネットでコラボレーションしながら、復旧や復興における建物や土木構造物の設計にボランティアの建築家や技術者の知恵を借りることもできそうだ。

 しかし、当時の私は彼らに対して何一つ、具体的な依頼を返信することができなかった。それは被災地における具体的なニーズを把握できていないことが原因だと改めて気がついた。この反省に基づき、私は「津波の被害と復興(Tsunami Damage and Restoration)」と題して講演を行った。

講演者の紹介(写真:家入龍太)

 地震の規模や震源地、各地の震度、そして津波の到達範囲などの情報が明らかになった時点で、既に被災地の“ニーズ情報の発信”は始まっているといえる。

 「いつ、どこで、何が必要か」といった具体的な情報を待たずとも、被災地での食糧や下着、簡易トイレなどのニーズ情報が「推測」できるからだ。

 その後、メディアによる避難所での粉ミルクやガソリンなど具体的なニーズが報道され、ツイッターやブログなどソーシャルメディアでさらに細かいニーズ情報が発信されていく。

 必要なときに必要な情報を、だれがだれに、どのように提供していくのか。講演の内容は、期せずして4月以来、本欄に掲載してきた東日本大震災関係の話題が中心となった。私は、GIS(地理情報システム)や3Dレーザースキャナー、衛星写真などを使って行われた被害把握手法や、BIMによる仮想コンペの手法を活用して、被災地に対する国際協力の可能性を提案した。