設計の可視化、干渉チェックを超えた活用法
「別の言い方をすれば、BIMとはデータ交換可能なデータベースである。いったん、建物の物理的、機能的特性がデータの形になれば、これまで難しかったこと、長い時間を要したこと、実現性がなかったこと、そして不可能だったことが可能になり、建設業界に多くの利便性をもたらす」(ジョーンズ氏)。
2009年にマグロウヒル・コンストラクション社が実施したBIMユーザー調査「BIMのビジネス価値(THE BUSINESS VALUE OF BIM)」では、BIMのビジネス価値として1位が「設計の可視化」、2位が「干渉チェック」だった。多くの人々はこれがBIMだと考えている。
建設業界でのBIM活用はさらに進化し、時間やお金の節約や生産性の向上といった実際的な活用、デジタル情報を生かした設計、施工プロセスや生産技術によって他産業に与える影響だ。その実例をいくつか紹介しよう。
BIMモデルデータの活用例に「ラピッド・プロトタイピング」という技術がある。3Dプリンターという機械にBIMモデルデータをインプットすることで、立体の模型を作る技術だ。この技術を使うことで、これまで大変、手間がかかっていた模型の作成が自動化できるようになった。
例えば、建物のバリエーションに応じて何十、何百通りもの模型を作り、それを入れ替えて街並みの中での建物の見え方や景観との調和を検討できるのだ。BIMモデルの色をそのまま模型に着色できる3Dプリンターもある。
次はコストデータとの統合だ。BIMモデルデータから、建物に使われる部材の数量を自動的に集計し、コストのデータベースと統合して建設費をはじくことができる。複数の設計案での初期建設コストの違いをすぐに知ることができる。
BIMモデルをプロジェクトマネジメントソフトと連動させることにより、実現性のある施工手順や工程計画を解析できる。
スウェーデンの大手建設会社、スカンスカ(SKANSKA)は施工段階でRFID(ICタグ)とBIMの連動による工程管理を行った。3000個のプレキャスト部材にRFIDを取り付け、工場製作から現場への輸送、そして現場での設置の状況を管理した。そして、プレキャスト部材の設置が最も効率的に行えるように、3台のクレーンを毎日、計画的に配置した。