PR

 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などによって建物を高精度で設計しても、施工段階で設計データと現場との間に食い違いが生じると、建物を構成する各部材が干渉したり、プレハブ化した部材がうまく納まらなかったりという問題が発生する。

 また、既存の建物を改築したり、増築したりする場合、現場と現況データとの間に食い違いがあると、設計通りに施工することができない。

 そこで、両者を一致させるための様々な技術やシステムが開発され、現場でも使われはじめた。

設計データを高精度で現場に墨出し

 設計図にある「点」や「線」に相当する位置を、敷地や床、壁などの上に示すことを「墨出し」と言う。これまでは水平器やメジャーなどを使っての手間のかかる作業だった。この作業がBIMや3次元CADによる設計の普及によって変わり始めた。

 東京都北区にある測量会社、大浦工測は墨出し作業用に、米国のレーザー・プロジェクト・テクノロジーズ(Laser Project Technologies。以下、LPT)社の3Dレーザープロジェクター「LPT4」を導入した。LPT4は、もともとは製造業用に開発された機器だ。 3次元CADのデータを基に、飛行機や船の側面など、曲面上に部品の取り付け位置などをレーザー光線で投影するものだ。その精度は6mの距離で0.5mmと高い。これを建設分野の墨出し作業で活用しようというわけだ。

CADデータを基に墨出しを行う3Dレーザープロジェクターの機器一式(写真:大浦工測)
製造業での活用事例(写真:大浦工測)
内装工事での墨出しのイメージ(写真:大浦工測)

 「LPT社の社長から『建設関係の企業が導入する例は非常に珍しい』と言われた」と、大浦工測の大浦章代表取締役は語る。今後、BIMや3次元CADで設計した建物の墨出しや出来形検査、駐車場のライン工事、プラント機器の位置出しといった業務の効率化を図る計画だ。

 さっそく同社では、社屋の屋上に社名や社章、電話番号をペンキで描く作業に挑戦した。建設分野での活用技術を高めるため、社員の操作訓練の一貫として行ったものだ。

3Dレーザープロジェクターで社屋屋上に社名などを描いた作業の手順。(1段目)CADでデザイン。(2段目)3Dレーザープロジェクターを設置し、社章や文字の輪かくなどをレーザー光で照射。(3段目)レーザー光を頼りにけがき作業。(4段目)ペンキで塗り分け。(5段目)完成した社章や文字(資料・写真:大浦工測)

 作業は、塗装のプロには一切頼らず、同社の社員だけで行った。屋上の一部には段差やフェンスなどもあるが、真上から見たときに文字がちゃんと見えるように描くことができた。「グーグルアースの写真更新時に、当社の“看板”として写ることを期待した」と大浦氏は語る。

3次元CAD+トータルステーションで墨出し

 設備工事大手の新菱冷熱工業は、同社で活用している設備設計用3次元CAD「S-CAD」とトータルステーションを連携させ、墨出しを行うシステムを開発した。

 S-CADの設計データをまずスマートフォンに入力し、スマートフォン上で墨出しする位置を指定すると、トータルステーションが瞬時にその位置をレーザー光で照射するものだ。同社では床や天井、壁への各種墨出しや、基礎のアンカー墨出しに活用している。

 また、現場の機器などの位置をトータルステーションで計測し、その位置データをスマートフォンを介してS-CAD上に反映することもできる。改修工事の現場調査での計測や、プレハブ管を製作するための採寸や位置計測に使用している。

 同社では、このシステムによって墨出しや計測を1人で簡単・正確に行うこときるようになると見込んでいる。さらに、S-CADによる設計データと墨出し作業の連携させることによる工期短縮などを目指している。

新菱冷熱工業が開発した墨出しシステムの概要(上段)。S-CADの画面(中段左)。レーザー光で壁に照射した墨出し位置(中段右)。計測ユニットを使った現場計測(下段左)。スマートフォンの画面(下段右)(資料:新菱冷熱工業、写真:家入龍太)