設計分野で普及が進みつつあるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や3次元CADの活用が、施工分野へと進みつつある。例えば複雑な切り口を持つ鋼管を切り出すガス切断機や、コンピュータ数値制御(CNC)のレーザーカッターやルーター(木工用の切削工具)が、BIMや3次元CADのデータと連動し始めたのだ。

 一方、鉄筋の専門工事業で使われてきた専用ソフトに、3次元による配筋や干渉チェックなどの機能を追加する動きもある。建設業の生産システムが設計、施工とスムーズに連携することで現場の作業は減り、工場による自動製作のメリットを生かして生産性向上への道が開ける。

BIMモデルとパイプ切断機がデータ連係

 東京スカイツリーの断面は、下が3角形で上にいくにつれ徐々に円形に変わっていく。鋼管部材で造られた立体トラスには、同じ部材はほとんどないと言ってもよい。また、円形の断面が急な角度で交差するため、鋼管部材の切り口は複雑な曲面となっている。

 この複雑な部材の加工に使われたのは、丸秀工機の3次元パイプ切断機「パイプコースター」だ。「直径約1350mmの鋼管の交角は22~28度で切断精度は±1mm以内が求められる。角度が0.1度狂うと、交差位置がmm単位で違ってしまう。そのため、高精度な設計データが必要だった」と、丸秀工機専務取締役の関元喜氏は説明する。

鋼管を正確に切断するパイプコースター(写真:丸秀工機)

 東京スカイツリーの部材のパイプの切り口は、溶接時の作業を考慮して「開先」という角度を付けておかなければならない。まさに名人芸が求められる作業だ。汎用CADで作成したトラスの形状データを、工場の技術者が1本1本パイプコースター用の加工データに変換していた。また、製作後の検品のためには、2次元の図面も必要だ。

複雑な切断面(左)と正確な接合(写真:丸秀工機)

 この設計データを加工データに変換する作業も、BIMモデルの活用で大幅に省力化が実現した。テクラが開発・販売する詳細構造設計用のBIMソフト「TeklaStructures」と、丸秀工機のパイプコースターとの間でデータ連係を行うソフト「PIPELABO」が2011年6月に完成。TeklaStructuresで設計した構造物のBIMモデルデータを、パイプコースター側で加工用データに自動変換できるようになったからだ。

 「これまで加工用のデータを作ったり、3次元のデータを2次元図面に変換したりするのに何人工もの作業が発生していたが、TeklaStructuresのデータを活用して、クリック一つでできるようになった」と関専務は語る。

左のモニターにはTeklsStructures、右のモニターにはPIPELABOの画面を表示させてBIMモデルデータをパイプコースターの加工用データに変換する(写真:家入龍太)

PIPELABOで溶接部の開先形状を表示させた画面(左)。工場で検品などに使用する加工図(右)(資料:丸秀工機)

 「角パイプにも対応できるようにしたため、データ連携の開発には約1年もかかった。これから追加したい機能もあるので、年内にもバージョンアップしたい」(関専務)。

 丸秀工機がこれまで販売したコンピューター数値制御方式のパイプコースターは174台。そのうち、海外向けが約3分の1を占める。

 日本に比べて海外の工場では、早くからTeklaStructuresが普及していたため、今回のデータ連携には海外からも要望が多かったという。