PR

日本人研究者もKinectに注目

 Kinectの計測機能に注目したロボット開発者などの専門家ユーザーは、その仕組みや仕様を解析し、パソコンで使うためのオープンソースのドライバーソフトを開発した。ユーザーの動きに押される格好で、マイクロソフトは2011年6月にシステム開発用ソフト「Kinect for Windows SDK」のベータ版を無償公開した。

 これをきっかけに、Kinectをゲーム機器以外の様々な用途に活用しやすくなったのだ。建設分野では、室内などの3次元形状をリアルタイムで計測する使い方が注目されている。

 スワート氏がデモを行ったシステムは、Kinectで計測した点群データをフォーラムエイトのバーチャルリアリティーソフト「UC-win/Road」に転送するために開発したものだ。

 同会議に参加した大阪大学大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻 環境設計情報学領域(矢吹研究室)の福田知弘准教授も、Kinectの活用に関心を持つ研究者の一人だ。

 「Kinectは赤外線を使い、画像の粒子であるピクセルごとに距離に相当する『深度』を毎秒十数回も計測できる。実験してみた結果、1~4mくらいの範囲なら、5cm以内の誤差で測定できることが分かった。ただ、赤外線を使っているため、屋外での日中の測定は難しい」と、福田氏は説明する。

 3Dレーザースキャナーは、静止している建物や物体を1回の計測に数分間かけて行うのに対し、Kinectは瞬時に画面全体の点群データを取得できる。そのため、動きのある物体や状況が変化する様子をリアルタイムで計測できるのが強みだ。

 福田氏はKinectによって取得した点群データを基に、建物などの3次元モデルデータを作成し、拡張現実感(AR)システムで使用できるようにする研究などを行っている。「スワート氏から、点群データを処理するためのオープンソース『PCL(Point Cloud Library)』があるという情報も聞いたので、開発はますますやりやすくなった」(福田氏)。

Kinectの拡張現実感システムなどでの活用について研究している大阪大学大学院工学研究科の福田知弘准教授(写真:家入龍太)

建物の点群データ(左)から平面や角を自動抽出し、単純なモデル(右)を作成するシステム(資料:福田知弘氏)