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 1970年に完成した東京・四谷の新菱冷熱工業本社ビルで、大規模な省エネ改修工事が行われている。建物の外熱負荷を抑える改修を行ったうえに、高効率の空調機器や自然エネルギー活用システムを導入し、ビルの各部できめ細かい制御が行えるようにするものだ。

 既に建物の環境性能の指標である「CASBEE(改修)」のSランクの認証を取得しており、省エネ改修後のエネルギー削減率は最終目標として40%、CO2削減率は同37%を目指している。改修工事は2011年9月に完了予定だ。設計監理者として三菱地所、施工者として清水建設が協力している。

 愛着のある築40年のビルを建て替えることなく、改修によって大幅な省エネ性能と快適性を両立させる鍵は、設備用3次元CADなどITの地道な活用にあった。

最新空調技術のオンパレード

 世界で一番空気がきれいと言われているオーストラリアのタスマニア島の空気品質を目指し、「東京・四谷を、タスマニアに。」というキャッチフレーズで進められている改修工事は、最新空調技術のオンパレードとも言えるものだ。

 高効率の空調機器としては、消費電力の5倍の高効率空冷ターボヒートポンプや、ガスエンジンで発電と排熱による冷暖房を同時に行う「ガスコージェネレーションシステム」を導入した。

 自然エネルギーの利用として興味深いのは、「ソーラークーリングシステム」。太陽熱温水器で作った100度近い高温水を、ソーラージェネリンク(排熱投入型冷温水器)によって冷房に使うことができる。冬季はもちろん、暖房に利用する。

 このほか、約8kWの太陽光発電パネルを設置したほか、涼しい時期の空気を利用した外気冷房や冬季に低温の外気で冷却した水をサーバー室の冷房に利用する「フリークーリング」を導入する。

新菱冷熱工業の本社ビル省エネ改修工事に導入されたシステム(資料:新菱冷熱工業)

築40年の本社ビル外観(左)と屋上に設置された太陽光発電パネルや高効率空冷ターボヒートポンプ(左)(写真:家入龍太)

 「除湿・冷却分離空調システム」の導入も省エネ策の1つだ。夜間電力を利用したダイナミック型の氷蓄熱システム(システム名:ザ・自由雪計)で作った4℃の冷水を、外気取り入れ部分に設置したドライコイルに通してまず除湿する。

 「乾いた空気を室内に供給することで、冷房機器は除湿のためのエネルギーを使わずにすむうえ、空調の設定温度を高めにしても快適だ。そのため省エネ運転が可能になる」同社首都圏事業本部省エネルギー推進部営業企画課専任課長の金子寛明氏は説明する。

除湿・冷却分離空調システムの概念図(資料:新菱冷熱工業)

つくば市の中央研究所にある氷蓄熱システム「ザ・自由雪計」のデモンストレーション装置(左)と本社地下室にある蓄熱槽にたまった氷(右)(資料:新菱冷熱工業)