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 2011年8月23日、早稲田大学早稲田キャンパスで始まった日本建築学会大会(関東)で、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に関する2つの研究集会が開催された。

 「建築学会報告(1)」では、午前に開催した「BIMによって建築生産はどのように変わるのか」(主催:同学会材料施工委員会)についてお伝えした。今回は、午後に開催された「BIMはどこまで来ているか」(主催:同学会情報システム技術委員会)についてリポートする。

8月23日の午後に開催された「BIMはどこまで来ているか」の会場(写真:家入龍太)

 前田建設工業の綱川隆司氏は、設計や施工段階で作成したBIMモデルを、建物引き渡し後の維持管理に活用することを考えている。「現在の維持管理業務では、3つのフラストレーションを抱えている。建設情報の散逸と検索、図面の取り扱い、情報更新の煩雑さだ」と綱川氏は言う。

 BIMを使って、これらの問題を解決するため、1994年に竣工した東京・練馬区にある同社のオフィスビル「J.CITY」の現状をBIMでモデル化した。「竣工図は2000枚以上あり、この中から必要な情報を探し出すことは非常に手間と時間がかかった。図面と実際のビルとが合っていないこともあった」と語る。

 「これまでは天井裏の配管やダクトの位置は、天井板を外して見なければ分からなかったが、BIMモデルなら天井板を非表示にするだけでよい」と綱川氏はBIMモデルによって、建物情報がライフサイクルにわたって利用しやすくなるメリットを説明した。

前田建設工業の綱川隆司氏(左)とBIMモデル化した竣工図面と家具類(右)(資料:前田建設工業、写真:家入龍太)

 

 綱川氏は建物だけにとらわれず、「動産」も含めたBIMモデルによる管理を提案した。「J.CITY」では、建物の意匠、構造、設備のほか、机やイスなどの家具類も忠実にBIMモデルに入力した。

 「企業の管理部門では、モノの位置情報を把握することが重要だ。組織変更などで机などの位置が20階から21階に移動したとき、BIMモデル内の家具を同じように移動させる。するとBIMモデル内にある家具の位置情報も自動的に変わり、什器類の管理リストが更新される。BIMによる維持管理は、情報が動的に変わるのが特徴だ」と、綱川氏は説明する。

 安井建築設計事務所の村松弘治氏は、社長からのトップダウンで2007年から計画的にBIM活用に取り組んできた。実務でのBIM活用率が基本設計では90%、実施設計では65~75%に達したという。同社でもBIMモデルデータを維持管理に生かすことを視野に入れている。

 「BIMはツールであると同時に、設計のプロセスを表すものでもある」という村松氏は、建物の形状や仕様を表すBIMモデルと、そのプロセスにおける情報を管理する「BIMt」(ビジネス・インフォメーション・マネジメント)とを組み合わせた運用の必要性を訴えた。

安井建築設計事務所の村松弘治氏(左)とBIMとBIMtの連携イメージ(右)(資料:安井建築設計事務所、写真:家入龍太)

 

●「BIMはどこまで来ているか」 (氏名は発表者)

1.趣旨説明  位寄 和久 (熊本大学)

2.主題解説
「BIMの海外事情」
   山下 純一(IAI日本)
「Build Liveを主催して見えたこと」
    山極 邦之(IAI日本)
「BIM/IPDと設計プロセス」
   村松 弘治(安井建築設計事務所)
「BIMはどこまで来ているか-設備設計での取り組み」
   三木 秀樹(須賀工業)
「FMとBIM」
   綱川 隆司(前田建設工業)

3.討論
   パネリスト:主題解説者、猪里 孝司(大成建設)


4.まとめ  中元三郎(安井建築設計事務所)


司会   猪里 孝司(大成建設)
副司会  玉井 洋(鹿島建設)
記録   東山 恒一(清水建設)