PR

自動車業界で培った3次元マニュアルを建設業に

 毎月第3金曜日の夜、BIMコンサルティング会社、シェルパ(本社:名古屋市千種区)の東京オフィス(東京都中央区)には、BIMに関心のある設計者や施工者、発注者などが集まり、2時間ほどのセミナーを開いている。

 「OPEN BIM cafe」と呼ばれるこの集いには、使用するソフトにかかわらず、様々な企業・職種のメンバーが毎回、入れ替わりで20人ほどが集まり、BIMを活用する実務者やソフトベンダーなどが講師となってBIMに関するいろいろな話題を提供している。

 セミナー修了後は、ドリンクを片手に立食形式でBIMをサカナに自由に話し合う「パワーディスカッション」が行われる。毎回、満員御礼となってしまうほどの人気ぶりだ。

 8月26日に開催された第4回には、初めて建設業界以外から、自動車メーカーなど向けに3次元設計システムを開発・提供しているラティス・テクノロジー(本社:東京都千代田区)の鳥谷浩志代表取締役社長らを講師に招いた。

 パワーディスカッションの場で、「XVL」というデータ形式を使って建物の3次元モデルを構築し、iPad上で視点を変えて閲覧するデモンストレーションを披露したところ、参加者はそのスムーズな動きに圧倒された。XVL形式は、高精度な3D画像を軽いデータで表現できるため、インターネット上での閲覧などに適している。3次元モデルを使って製造業の生産性を高めるため、同社が独自開発したものだ。

8月26日に開催された第4回OPEN BIM cafeで講演するラティス・テクノロジーの鳥谷浩志代表取締役社長(写真:家入龍太)

XVLの動画付き作業指示書(左)や各部品の属性情報を表示した画面(右)(資料:ラティス・テクノロジー)

BIMモデルのデータ交換に使われる「IFC形式」をXVL形式に変換し、iPad(上段左)上で視点を変えての閲覧(上段右)や、設備(下段左)、干渉部分(下段右)を表示させたところ(資料:ラティス・テクノロジー)

 10年近く前、まだパソコンの性能が今日ほど高くなかった時代に、自動車を丸ごと3次元モデル化して開発・製造・調達などの実務で使えるように、データの容量を極力、軽くした。このモデルデータを使って部品間の干渉チェックや工程アニメーション付きの作業指示書や組み立てマニュアルなどを開発した。

 さらに部品の使用や製品内の位置などの「属性情報」を3次元モデルに付加して、製造や調達といった生産のワークフローの中で活用できるようにしたのだ。製品の3次元モデルに属性情報などのデータベースを付加して、設計・生産など一連のプロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)を進めていく考え方は、BIMとそっくりだ。いや、PLMこそBIMの先輩であり、学ぶべきところは多いのかもしれない。

 同社ではBIMのデータ交換用データ形式として標準的に使われている「IFC形式」をXVL形式に変換するソフトを開発した。今後、建設業界でもXVLを使った設計・製造ソリューションを展開していきたいと考えている。

ラティス・テクノロジーがXVL形式を使って進めてきた製造業のPLM(右)と、今後、BIMとの連携で目指す建物ライフサイクル管理の考え方(左)は非常に似ている(資料:ラティス・テクノロジー)