次世代のハード、ソフト普及前の効果的な現実解
これまでは、配筋検査の前に4~5人がかりで検査野帳を作成・チェックしていたが、「配筋CLIP」を使うと作成後のチェックがほぼ不要となり、1人だけでできるようになった。その結果、検査野帳の代行作成関連コストが6割削減したのである。
配筋検査の効率化は、どこの建設会社でも課題になっている。iPadやAndroid端末といった最新のハード機器や、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)による配筋設計データの活用などによる抜本的な生産性向上策を検討している会社も多いだろう。
竹中工務店でもこれらの最新機器、ソフトの活用は視野に入れている。しかし、現段階では新しい機器やソフトはどんどん変化し、紙図面とデジカメ中心に動いている現場の実務で本格的に使うことは難しい。
その点、現在、実務で幅広く使われているCAD図面から、必要な情報を読み取り、加工するという作業をVBAでパソコンに代行させるという方法は、現実的で多くの現場が受け入れやすい。そして目に見える効果を出せるものだ。
ただし、一般的にVBAを使ってカスタマイズしたシステムは、担当者レベルで作成した場合は特に、システムを開発した本人が異動した場合などの引継ぎをしっかりしておかないと、機能拡張やソフトのバージョンアップなどに対応したメンテナンスなどが、行いにくくなりがちだ。IT分野で何年か前に話題になった、いわゆる「Excelレガシー」の問題である。その点には留意しておいたほうがよさそうだ。
高瀬氏はこの点について「このシステムは既にWindows7、Office2010、AutoCAD2012にも対応しており、このままでもあと4~5年は使えるだろう」と説明している。
図面の書式などが統一されている企業では、次世代のハード、ソフトが本格的に現場に普及するまでの間、VBAによって業務効率化のシステムを柔軟に開発・活用していく方法は、日々の生産性向上を実現するうえで有効な手段なのかもしれない。

家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/。ツイッターやfacebookでも発言している。