新人、2次元設計からの乗り換え組が続々参加
大林組は今回、同社の作業服カラーをイメージさせる「ORANGE ARK」というチームで参加した。前回は東京の本社だけが参加したが、今回は東京は7~8人に対し、大阪本店の若手メンバー約25人が初参加し、ネットで協働した。
同社では3年ほど前から新入社員教育にBIMの研修を取り入れ、BLK2011への参加はBIM教育を兼ねている。十数台のパソコンとモニターが向かい合うように並ぶ会議室は、ワイワイガヤガヤとした活気が満ちていた。
意匠設計は大阪本店にいる入社6、7年目の設計者が務め、彼らが決めたコンセプトに基づき、構造や設備の設計やPAL計算、エネルギーや日影などのシミュレーションを大阪本店が中心となって進めていった。東京本社は大阪から送られてきたBIMモデルデータを基に、流体解析などを行った。
若手の活躍は他のチームにも多い。2009年に続き2回目の参加となる新菱冷熱工業のチーム・タスマニアは今回、参加メンバー約40人のうち約8割が新規のメンバーだ。前田建設工業中心のスカンクワークスは、過去3回のBLTでチームリーダーを務めた綱川隆司氏に代わり、2005年入社の三原直也氏がリーダーとなった。
去年までフリーソフトのCADを使って2次元ベースでの設計を行っていた大阪市都島区のコンパス建築設計工房は、2011年1月、国産のBIM用CAD「GLOOBE」を導入した。同社のチーム「COMPAS」はBIM導入からわずか8カ月にもかかわらず、BLK2011に参加した。
意匠設計用CADと建築積算、構造設計、そして気流解析の各ソフトを連携させて、港町・神戸らしいレンガ造や煙突を生かしたデザインを完成させた。「時がたって汚れていくのではなく、古びていくよさを設計に取り入れた」とコンパス建築工房の西浜浩次代表取締役は語る。
「普段の実務は、予算を考えることが仕事の半分を占めている。BLK2011はお金を気にすることなく、アイデアをどんどん盛り込んで行けるので楽しい」(西浜氏)。
このほか、実務クラスには東北工業大学が中心となり、建築保全センター、セコムIS研究所、パスコ、アル・パートナーズ、フェイズ・スリーによって構成された産学連携チームの「BIX」も参加した。東日本大震災の体験を踏まえ、GISデータや避難・防災、環境、エネルギーなど建築情報を活用した次世代の建築設計手法に挑戦した。
BIM元年から3年目に開催されたBLK2011では、3次元で建物を設計することは珍しくなくなり、BIMモデルを使った解析やシミュレーションも普通になってきた。また、完全徹夜で奮闘するというチームも減り、仮想コンペという場を、社員教育や新しい技術開発、新機軸の導入に活用しようというゆとりを感じさせるチームが多かったのが印象的だ。
これは日本の建築業界におけるBIM活用の実績が積み重ねられ、日本独自のBIM活用が始まった証しではないだろうか。BLK2011の各チームの取り組みを見ていると、BIMの「I」が設計段階から施工、維持管理段階へと受け継がれ、有効活用が本格化する日は近そうだと感じる。そして、そのことこそが近未来の建設業の生産性向上につながっていくのだ。
