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 国土交通省関東地方整備局営繕部が、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の試行プロジェクトの一環として2011年7月に実施した「前橋地方合同庁舎(仮称)外(11)設計業務」の公募型プロポーザルには、梓設計、石本建築事務所、久米設計、昭和設計、安井建築設計事務所の5社が参加。その結果、9月28日に安井建築設計事務所が特定された。

 同社は施工中の海上保安庁海洋情報部庁舎など、国交省を含む5つの庁舎をBIMで設計してきた経験がある。BIMを使い始めた当初、そこでの大きな課題は、国交省の規格に合った図面を、BIMモデルから作成するノウハウを構築することだった。

 そこで、過去のプロジェクトでは、発注者と協議しながら線の太さや線種などを調整し、BIMモデルから国交省の規格に合った紙図面を印刷するための「テンプレート」や、ドアや窓などの3次元部品データ集である「ライブラリ」を地道に作成し、改良を重ねてきた。

 BIMを導入した建築設計事務所や建設会社では、こうした実務で使えるようにするための努力をそれぞれ行っている。言い換えれば、テンプレートやライブラリは、各社のBIMの実務ノウハウがぎっしりと詰まった知的財産である。BIM活用の先進企業ではこうしたデータを、これまで“門外不出”の扱いにしてきた。

 9月30日、安井建築設計事務所は建設関連の記者に呼びかけて記者発表を行った。その内容は驚くべきものだった。なんと、同社が長年の間、改良に改良を重ねてきたテンプレートやライブラリを、「意匠設計用BIMテンプレート Revit Architecture版」として外販するというのだ。

建物のBIMモデルの例(資料:安井建築設計事務所)

BIMモデルから様々な設計図書を効率的に作成するためのテンプレート(資料:安井建築設計事務所)

国土交通省の設計業務にも使えるライブラリ(資料:安井建築設計事務所)

安井建築設計が自社テンプレートを製品化

 「意匠設計用BIMテンプレート Revit Architecture版」は、これらのデータを使うと、平面図や立面図、断面図のほか建具表や仕上表、天井開口リストといった一般図レベルの意匠設計図書を、BIMモデルから効率的に作成することができる。国土交通省の設計業務のほか、民間建築の設計業務にも使える。

 ライブラリには図面の作成に必要な「ファミリ」と呼ばれる建材などの部品が1000点程度付属しているほか、製品にはBIMモデル作成の参考になるサンプルモデルなども含まれる。これらのデータ集はDVDで提供され、発売は12月を予定している。価格は未定だが「数十万円程度」になる見込みだ。

 同製品発売のニュースはBIM関係者の間に、またたく間に広がり、10月7日に東京・有明で開催された建築イベント「ArchiFuture 2011」のセミナーでも安井建築設計事務所の担当者が詳細を解説した。50人の席を用意した会場は満席で、立ち見を含めて約80人が詰めかけるほどだった。

 では、安井建築設計事務所は、なぜ、自社ノウハウの公開に踏み切ったのだろうか。

ArchiFuture 2011でのセミナーは超満員。会場外から受講する人までいた(写真:家入龍太)

テンプレートによりBIMから作成された平面図(資料:安井建築設計事務所)

BIMモデルから作成された断面図(資料:安井建築設計事務所)