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「損して得取れ」型の新しいビジネスモデルも

 今回のテンプレート集発売で、安井建築設計事務所が公開するのは、同社の「BIM推進のための3本柱」のうちの「標準化」だけだ。「教育・研修」や「手順・ルール化」の部分は、依然として各社に委ねられている。

 しかし、これらの部分も他社のやり方を取り入れながら、自社に合った仕組み を構築することができれば、BIM導入のための試行錯誤の無駄はかなり減るだろ う。逆に、既にノウハウを持っている企業、例えば安井建築設計事務所なら、自 社テンプレートを導入した企業に対し、これらの面をコンサルティングするとい うビジネスチャンスが広がってくることも考えられる。

「意匠設計用BIMテンプレート Revit Architecture版」のカタログ(資料:安井建築設計事務所)

 請負ビジネスを基本とする建設業は、一つ一つのサービスについて対価を求めるという考え方が根強くある。一方、インターネット業界などは、無料または格安のハード、ソフト製品を大量に供給し、その製品とは別に、広告やサプライ用品などでの売り上げを狙う「損して得取れ」式のビジネスモデルが多数存在する。

 今回紹介した安井建築設計の事例は有償モデルだが、今後、ほかの建築設計事務所や建設会社などが無償で互換性のあるテンプレートを供給し、「BIMモデルの業界標準」を構築できれば、そこから派生ビジネスが展開していく可能性もありそうだ。例えば、そのテンプレートに合った建材や設備のCAD部品集データを定期的に発売したり、テンプレートに基づいて作られたBIMモデルから様々な解析やシミュレーションをクラウドコンピューティングで行ったりなど、様々なサービスが考えられるのではないだろうか。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。

<訂正>
初出時に、安井建築設計事務所が「国交省の5つの庁舎をBIMで設計してきた」と記しましたが、「国交省を含む5つの庁舎をBIMで設計してきた」に訂正しました。(2011年10月17日20時28分)