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 「最優秀賞は、金沢大学のチーム『金大都市研』の『The Oasis』に決定します」──。BIMとVRを駆使して先進の建築土木デザインをクラウドで競う「第1回 学生BIM&VRデザインコンテスト オン クラウド」の最優秀賞である「ワールドカップ賞」が11月4日、審査会で決まった。開放感ある円環状の歩道橋に、木材や植栽など自然の材料を配した作品だ。

最優秀賞に選ばれた金大都市研(金沢大学 都市計画・建築計画研究室)の作品「The Oasis」(資料:金大都市研)
最優秀賞に選ばれた金大都市研(金沢大学 都市計画・建築計画研究室)の作品「The Oasis」(資料:金大都市研)

 フォーラムエイトが企画したこのコンペの課題は、バーチャルリアリティーソフト「UC-win/Road」をベースに同社のソフトを2種類以上使って、東京・渋谷に歩道橋を計画するものだ。最優秀賞のチームには、100万円という高額賞金が贈られるということでも注目を集め、13カ国の58チームがエントリーした。最終的に作品を提出したのは、日本、中国、韓国、オーストラリアの4カ国の15チームだった。

 審査の特徴は、UC-win/Roadをクラウドコンピューティング化した「VR-Cloud」というシステムを使ったことだ。普通、VRの作品をウオークスルーするためには、高性能のハードウエアとVR用ソフトが必要だ。クラウド化されたシステムは、インターネットに接続されたごく一般的なパソコンとWEBブラウザーさえあれば、VR作品の中を自由自在に動き回り、いろいろな角度から作品を見ることができる。

 作品は渋谷駅前の交差上に円環状の通路を設けるシンプルなものから、JRの線路をまたぐ壮大な橋、そして渋谷の数カ所を結ぶ空中回廊のような作品まで、学生たちの斬新なアイデアが込められたものばかりだった。VRなので、人やクルマ、電車などが実際の街さながらに動き回るのが、さらにリアリティーを高めていた。

 作品はチーム名を伏せてあり、すべて英語で表現されているのでどの国のチームかも分からないようになっている。各審査員は、2作品ずつに投票し、絞り込まれた8作品について、審査会で検討した。

各審査員から贈られた審査員特別賞(資料:フォーラムエイト)
各審査員から贈られた審査員特別賞(資料:フォーラムエイト)

VRによって“隠れた設計ミス”が明らかに

 審査会では、思わぬことが起こった。各作品をウオークスルーしながらVRを細かく見ていったところ、様々な問題点が明らかになったのだ。例えば、橋脚が道路のど真ん中に立っていたり、屋根の高さが場所によって人間の背より低すぎたり、スロープが予想以上に急だったりという問題点が続々と明らかになった。

審査員が集まった審査会では、操作性を高めるためにパソコンにインストールされたVRシステムを使った(写真:家入龍太)
審査員が集まった審査会では、操作性を高めるためにパソコンにインストールされたVRシステムを使った(写真:家入龍太)

 審査委員長の慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授/IKDS代表の池田靖史氏は「設計コンペの審査にVRを用いたことで、当初、あまり注目していなかった作品の魅力が急浮上したり、その逆もあった。コンペの評価にVRを導入することで審査結果にも大きな影響を与えた」と語る。

 実際、各作品に対する当初の評価は、審査会が進むにつれて二転三転した。例えば、上から見たときはあまり注目されなかった作品が、地表から見上げたときの構造美や視界が優れていたり、歩道橋自体は立派なデザインでも、下の空間に入ると圧迫感があったり、日照不足だったりすることが判明した。2次元情報のポスターは、図面と同様にある程度の“ごまかし”もきくが、VRだと作品の“隠れた設計ミス”までが洗いざらい明らかになってしまうことを審査員は実感した。

審査委員長の慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授/IKDS代表の池田靖史氏(写真:家入龍太)
審査委員長の慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授/IKDS代表の池田靖史氏(写真:家入龍太)

 フォーラムエイトでは、今年で10回目を迎える別のコンテスト「3D・VRシミュレーションコンテスト」の評価も今回からクラウド化し、「第10回 3D・VRシミュレーションコンテスト・オン・クラウド」として実施した。11月8日から11月14日まで、インターネット上で一般を対象に投票を行った。

 VRシステムのクラウド化は、設計コンペの評価を変えるとともに、日本中や世界中の幅広いネットユーザーに対し作品の評価者として参加する道を開くものだ。