建物のBIMモデルからガス代や電気代を自動予測
オートデスクがユーザー向けに提供しているクラウドコンピューティングシステム「Autodesk Cloud」には、Revit Architectureで設計した建物のBIMモデルから、毎月の消費エネルギーなどを自動的に計算してグラフ化する「エネルギー解析」というサービスがある。
建物の位置や向き、標高と、建物の開口部の大きさや材質から、建物が太陽から受けるエネルギーを計算し、空調に必要なエネルギーコストを月ごとのグラフで算出してくれるものだ。
BIMによる設計を売り物とする建築設計事務所、ビム・アーキテクツ(本社:東京都目黒区)は、2011年9月に開催されたBIMの仮想コンペ、「Build Live Kobe 2011」にチーム「Plan-B」として参加した際、ごく初期の設計段階から、CFDソフトの「WindPerfect DX」とRevit Architectureのエネルギー解析を使って、7つの案から1つに絞り込んだ。
複数の建物配置を決めるため、CFDで建物外部の風の流れを、Revitのエネルギー解析ではエネルギー消費量をチェックしたものだ。「建物の階数や外形など、ごく少ない情報しかない状態でも、風やよどんだり強すぎたりする部分がないか、建物のエネルギー消費量はどうか、といったことをある程度、予測できる。設計上、問題のある案を早い段階で知り、それを避けるようにすることで、設計の品質も高まる」と、同社代表取締役の山際東氏は説明する。
同様のエネルギー解析を行うソフトとしては、グラフィソフトジャパンがArchiCAD用にEcoDesignerというソフトを発売している。
設計中の建物のBIMモデルを使って、意匠設計者自らがその場で建物の環境性能や安全性などを確認しながら設計を進め、フィードバックを繰り返しながら建物の性能を最大限に高めていくためには、解析ソフトが意匠設計用ソフトと密接に連携し、ワンタッチで解析が行えるようにする必要がある。
そのためには、各解析ソフトがBIMによるデータ交換に対応する必要がある。最近はIFC形式の互換性が高まりつつあり、建物の形についてはほぼ問題なく異なるソフト間でデータ交換が行えるようになっている。
また、東日本大震災による電力不足をきっかけとして、太陽光発電パネルや蓄電池、電気自動車などを商用電力につなぎ、最適な電力運用を行うことで省エネやピーク電力を削減することも、重要な課題となっている。
一昔前に比べて、現代のビルは様々な設計要因が存在する。これらを調整しながら最高性能を発揮させるためには、一カ所に情報を集約し、シミュレーションを行いながら性能を作り上げていくしかない。BIMは設計情報を集約する場としても、今後、ますます重要性を高めていくだろう。

家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/。ツイッターやfacebookでも発言している。