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建物や路面などの3次元形状を誤差1~2cmという高精度で計測する3Dレーザースキャナーが、建設業はもとより、映画制作や事故現場の記録、そして遺跡の保存まで、幅広い分野で活用され始めた。建築分野で普及しつつあるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と組み合わせることで、建設業から他業界に対する新ビジネスのチャンスが増えてきそうだ。


 1964年の日本を舞台にした映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」が2012年1月21日に公開される。その年に開催された東京オリンピックや、開業した東海道新幹線は、時代を象徴する舞台装置として欠かせない。映画の中でも、開業当時活躍した「0系」の新幹線が疾走するシーンが登場する。

2012年映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のシーン((C)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会)
2012年映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のシーン((C)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会)

「三丁目の夕日64’」の0系新幹線を制作

 ところが今や0系の車両はどこにも走っていない。実は映画の中で登場する新幹線は、保存されている0系車両の車体を東京・北区の測量会社、大浦工測が3Dレーザースキャナーで計測したデータを基に作られたコンピューターグラフィックス(CG)なのだ。

 青梅鉄道公園(東京都青梅市)に保存されている0系新幹線の先頭車両を、大浦工測の担当者がいろいろな方向から3Dレーザースキャナーで計測し、車体の表面形状を「点群」と呼ばれる無数の点データとして取得した。

 各方向から計測した点群データを一つにまとめると、車体の表面にそって点群が並ぶ。このデータを基に、映画のVFX(視覚効果)制作を担当した、白組がCGを作った。

0系新幹線の先頭車両を3Dレーザースキャナーで計測する作業(左)。車両の左側には各方向から計測した点群データを組み合わせるための「ターゲット」が見える(写真:大浦工測)
0系新幹線の先頭車両を3Dレーザースキャナーで計測する作業(左)。車両の左側には各方向から計測した点群データを組み合わせるための「ターゲット」が見える(写真:大浦工測)

各方向から計測した点群データを組み合わせたもの(上)と、デジタルカメラの画像と組み合わせたカラー点群(下)。運転席の奥に見えるJRマークは、点群を裏側から見ている状態のため、裏文字になっている(画像:大浦工測)
各方向から計測した点群データを組み合わせたもの(上)と、デジタルカメラの画像と組み合わせたカラー点群(下)。運転席の奥に見えるJRマークは、点群を裏側から見ている状態のため、裏文字になっている(画像:大浦工測)

映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のシーン((C)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会)
映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のシーン((C)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会)

 この映画は、3D映画として制作されており、0系新幹線の特徴である丸みを帯びた形状は、ちょっとでも曲線の感じが実物と異なっているとリアルに見えない。その点、実物の車両に基づいたデータからCGを作ると、ホンモノそっくりに見えること請け合いだ。

 同社はこのほか、和歌山県内でも昭和30~40年代に活躍したディーゼルカーのレーザースキャニングを行った。

和歌山県で計測した気動車の点群データ(画像:大浦工測)
和歌山県で計測した気動車の点群データ(画像:大浦工測)

映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のシーン((C)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会)
映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」のシーン((C)2012「ALWAYS 三丁目の夕日’64」製作委員会)

 大浦工測代表取締役の大浦章氏は、この映画の試写会に招かれ、自社で計測した0系新幹線が画面の中を走り回る姿を見た。そして、映画の「エンドロール」には制作協力者として3D計測を担当した自社の社員ひとり一人の名前がていねいに記されているのを見て感動したという。

 今は現役を退いた車両が、リアルな姿で生き生きと走り回るCGのシーンは、時空を超えた感動を生む。そのCGに、細部に至るまでリアリティーを与えているのは、実物の裏打ちのあるデータだった。