BIMが発注者主導の設計・施工を加速

 GLプロパティーズが発注者としてBIMを採用したきっかけは、プロパティ・リスク・ソリューション代表取締役社長、土手英俊氏の提案からだった。土手氏は今回の工事の見積もりに先立ち、数回にわたってGLプロパティーズに対し、「BIM活用による物流不動産の建設・運用」といった内容でプレゼンテーションを行い、建設コストやライフサイクルコストの削減や生産性向上など、発注者としてのBIM採用メリットを熱心に説いた。

 その結果、GLプロパティーズが発注者としてのBIM活用のメリットを理解し、本格的な導入へと発展していった。

プロパティ・リスク・ソリューションの土手英俊代表取締役(左)と同社エンジニアリング部ブロジェクトマネージャーの大原慎司氏(右)
プロパティ・リスク・ソリューションの土手英俊代表取締役(左)と同社エンジニアリング部ブロジェクトマネージャーの大原慎司氏(右)

 GLプロパティーズの社内には大手の建設会社や建築設計事務所、不動産会社出身の建築技術者が8人おり、一級建築士も含まれている。それだけでなく、彼ら技術者が前職の経験を生かし、自社が建設する物流倉庫の設計、施工に深く関与しながら高品質の建物を、できるだけ安く、早く建設するといった挑戦ができる組織体制にもなっている。BIMの導入に踏み切っることができたのも、こうした背景があってのことだ。

 日本の施主は自社内に一級建築士がいても、自社が建設する建物の設計・施工にはあえて口出しせず、建設会社側に責任を持たせることでリスクを回避する方法をとっている会社が多い。超大手のデベロッパーといえども、例外ではない。

 その点、建物のコストや品質に大きな影響を及ぼす構造部分の設計を自社の責任で行い、BIMソフトを指定してまで深く、設計・施工の方法に関与するGLプロパティーズの例は、発注者主導の設計・施工が日本でも始まったことを意味する。

 プロパティ・リスク・ソリューションの土手氏は「今回のプロジェクトで一番驚いたのは、現地説明会でGLプロパティーズが、建物の設計思想や施工方法などについて説明したことだ。普通は設計事務所などに依頼することが多いのだが」と振り返る。

 BIMならではの設計・施工の可視化や分かりやすさによって、発注者が計画に関与しやすくなった。これを生かして効率化やコスト削減を目指す発注者が増えれば、発注者側の組織内部の建築技術者の役割がますます重要になる。彼らの設計への主体的な参画によって、よりニーズに合った建物を実現できる時代の到来を先取りした事例といえるだろう。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。