クラウド活用で技術者の移動時間を節約
富士通の「SuperCALS橋梁点検支援システム」は、橋を管理する地方自治体の業務をクラウドコンピューティングの活用によって合理化するために開発されたものだ。業務効率化のポイントは、現場に出掛けて構造物の映像を撮影する人と、映像データをチェックする人を分けることにある。
まず時間的に余裕のある人がハイビジョンのビデオカメラを持って現地に出掛けて橋や道路などを撮影し、その映像データをクラウドコンピューティングシステム上で稼働する点検用データベースにアップロード。その映像を別の場所にいる専門家が見て点検し、損傷個所などをチェックする。
現地で橋梁を撮影する作業は撮影のためのマニュアルが用意されているため、土木の知識がない人でも、点検に必要な映像を撮影できるようになっている。また、撮影したハイビジョン映像は画像処理技術によって鮮明化されるため、暗く見づらい部分も見やすく補正される。このほか、ハイビジョン画像が改ざんされていないことを保証する技術もある。これらの技術は特許出願済みだ。
富士通の資料によると、担当職員が自分で現地に行って点検する場合は1橋当たり31.0時間かかるのに対し、撮影・点検分離方式だと13.7時間で済む。現地撮影する人のコストは技術者に比べて低いため、金額ベースだとわずか31%で済むという。
インターネットの普及や高速化、ビデオの高品質化、画像処理技術の進歩により、構造物の点検を行う技術者の移動時間や現地撮影の時間をなくし、より付加価値の高い点検に集中させることで効率化できるようになったのだ。
富士通と岐阜大学は、岐阜県の協力を得て、橋梁や道路の効率的な管理と維持管理を実現するため、このシステムを使った「道路ネットワーク維持管理支援サービス」の実証を2012年1月17日から同年3月31まで行っている。
今回の実証は、「点検支援サービス」と「維持管理支援サービス」からなっている。岐阜大学は橋梁や道路の損傷状況の分析などを担当し、専門家による多角的な研究能力と学術資源、人的資源を提供する。一方、富士通は「SuperCALS橋梁点検支援システム」など、装置や情報収集、登録、分析支援技術などサービス環境を提供する。
点検支援サービスでは、橋梁点検システムで収集した各種情報のほか、自動車に搭載したデジタルタコグラフの位置や速度、揺れなどの情報や、ドライブレコーダーの画像情報なども活用する。そして道路や道路の損傷状況の分析や補修必要個所の特定、予測精度向上などの実証を行う。
また、維持管理支援サービスでは、点検結果に基づき、道路ネットワークのより効率的な維持管理計画を作成する支援を行い、有効性や利便性、網羅性について検証する予定だ。