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BIMソフトに現場の情報を集約

 新菱冷熱工業が最初に行ったのは、設備を入れ替える機械室などの設備や建物を徹底的に計測することだった。1日延べ40人程度の技術者を動員し、“人海戦術”で測ったデータは、自社開発の設備用BIMソフト「S-CAD」に集約していった。「現場のほか本社などの設計者がネットワークを介して設備のBIMモデルを共有し、最新の状況を確認しながら設計を進めていった」と金子氏は振り返る。

現場での計測作業(左)。計測データはBIMモデル(右)に統合した(資料:新菱冷熱工業)
現場での計測作業(左)。計測データはBIMモデル(右)に統合した(資料:新菱冷熱工業)

 新菱冷熱工業は、BIMをうまく活用することで設計時の手戻りを防ぐことを心がけた。初期段階ではラフなBIMモデルを作り、徐々にモデルを詳細化していく方法だ。

 「初めから詳細な配管やダクトの配置などを入力しておくと、機器の位置が変わったときには入力し直す必要があり、無駄な修正作業につながる。設計順序を意識してBIMモデルを30%、60%、100%と段階的に進化させていくことで効率的に作業できる」と工事にかかわった新菱冷熱工業の河内一人氏は語る。

設計段階によるBIMモデルの進化イメージ。初期段階ではラフな3次元モデルを構築して確認、フェーズが進むにつれモデルを段階的に完成させることにより無駄な修正作業は行わない(資料:新菱冷熱工業)
設計段階によるBIMモデルの進化イメージ。初期段階ではラフな3次元モデルを構築して確認、フェーズが進むにつれモデルを段階的に完成させることにより無駄な修正作業は行わない(資料:新菱冷熱工業)

作業開始後5日目には、すでにこのような図面ができあがった(資料:新菱冷熱工業)
作業開始後5日目には、すでにこのような図面ができあがった(資料:新菱冷熱工業)

最終的な設計承認用の図面(資料:新菱冷熱工業)
最終的な設計承認用の図面(資料:新菱冷熱工業)

 地下にある既存の機械室は開口部の大きさが限られているため、各機器は分解して搬入し、現場で組み立てられるように設計した。また、屋上に設置する機器は、クレーンでつり上げる作業の過程をBIMでシミュレーションし、転倒防止用のアウトリガーの張り出し位置や必要となる樹木の伐採を視覚的に分かりやすくし、警察や環境関連の官庁と協議した。

クレーンによる施工のシミュレーション(資料:新菱冷熱工業)
クレーンによる施工のシミュレーション(資料:新菱冷熱工業)

 その過程では、会館やJFSとBIMモデルを見ながら打ち合わせを繰り返し、設計や施工方法を固めて行った。日中友好会館資産管理部部長の中村智之氏は「紙の図面だと工事のイメージがわかないが、グラフィカルに見せてもらったことで着工前でも現場の状態がよく理解できた」と言う。

 このほか、3Dモデルのデータを埋め込んだPDF形式のファイル「3D PDF」も活用した。Adobe Readerなどの無料ソフトで、PDFファイル内の3Dモデルを回転、拡大縮小、ウォークスルーなどができるというものだ。S-CADから3D PDFに書き出してメールに添付し、日中友好会館に送ったのだ。解決が必要となる部分などを事前に見てもらうことで、受発注者間で理解と情報共有を深めるのに役立った。

設計内容をいろいろな角度から見られる3DPDFも受発注者との情報共有に活用した(資料:新菱冷熱工業)
設計内容をいろいろな角度から見られる3DPDFも受発注者との情報共有に活用した(資料:新菱冷熱工業)