建物の意匠設計と配管をマッチング
日中友好会館の本館と別館には、それぞれ独立した系統の空調設備があった。今回の工事では、別館側の灯油炊き吸収式冷凍機などを撤去し、代わりに本館側に2つの建物の熱源機器を統合し、冷温水を供給するようにした。「熱源機器を統合することで省エネ効率を高められる。熱利用の時間的パターンが異なるテナントが複数存在するため、エネルギーのピークを分散できるので実現可能と判断した」と、日本ファシリティ・ソリューション技術本部エンジニアリング部主任技師の原田浩司氏は説明する。
別館の屋上にある既設のクーリングタワーは、本館側の設備につないで再利用した。そのため、本館と別館の間に4本の配管を新たに設置しなければならない。
これらの管は地中に埋設できれば理想的だ。しかし、思わぬ問題があることが判明した。新築時の図面を集めて調べたところ、本館と別館地下には建物の建設時に使った「SMW」と呼ばれる地下連続壁が横切るように残っており、既存の配管や排水溝などが複雑に入り組んでいることが分かったのだ。
そこで新菱冷熱工業は、S-CADにこれらの地下構造物を入力。打ち合わせでは4本の新しい配管を埋設することは非常に難しく、法律で定められた点検やメンテナンスを行うことも難しいことを会館側に説明した。その結果、本館と別館をつなぐ4本の配管は地上に設置されることが決まった。
一方、新しい配管を空中に地上に設置する場合は、緊急車両などの進入に備えて、その下に高さ4m以上の空間を設ける必要があった。場所が本館入り口に近いため、こんな高さを4本の配管や架台が横切ると、いかにも見栄えが悪い。会館側も建物の意匠との整合性を重視した。
そこで、配管を隠すように装飾材などを取り付けた状態をBIMモデルで再現し、人の目の高さで見た状態を確認するとともに、架台の上部には銅板のレリーフを設けた。
レリーフを製作した金属造形作家の岡島延峰氏は「配管を見栄えのよいものにしようと、日本の富士山と中国桂林がキャッチボールするイメージで友好関係を表現した。2.5m×1.2mの銅板を半分に切り、金づちで打ち出して、緑青を吹かせて着色したが、これまで経験したことのない大きさなので苦労した」と語る。