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東日本大震災以降、日本列島周辺の地殻の応力バランスが変化し、以前に比べて地震が増えている。首都直下型地震や東海・東南海・南海地震などはいつ起こってもおかしくない状態と言われるいま、オフィスビルでも巨大災害の発生を織り込み、災害時にも機能を停止させないBCP(事業継続計画)を実現するための対策が進みつつある。通信ネットワークにより他の拠点と連携した取り組みも出てきた。

 首都圏直下型地震であるマグニチュード7クラスの「東京湾北部地震」が起こった場合、最大震度は、従来想定されてきた震度6強ではなく震度7となる――。3月7日、東京大学地震研究所の平田直教授らは、こんな予測を記者会見で発表した。震源になりうるフィリピン海プレート上面の深さが、従来、考えられていたものより約10km浅いところにあることが分かったため、揺れが大きくなるという。

 東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の影響で、日本列島周辺では地震が増えている。平田教授は1月、南関東地方で東京湾北部地震など「マグニチュード7クラスの地震が30年間以内に起こる確率は約70%」と発表している。大きな地震がいつ起きてもおかしくない状況なのだ。このほか中部や関西地方でも、東海・東南海・南海地震の発生が危ぶまれている。

 また、東日本大震災時に多くの帰宅難民が発生した反省から、地震などの災害が発生したときの企業の対応も、「発生後、直ちに帰宅する」というものから「しばらくオフィス内にとどまる」という方向に修正されつつある。

より切実さを増したオフィスビルのBCP

 こうした状況をうけて、オフィスビルに求められているのが、災害発生後もビルの機能を稼働させ続けるためのBCP(事業継続計画)対策だ。

 三井不動産は3月8日、「オフィスビル設計指針」を防災強化などの観点から改定したことを発表した。2012年2月に完成した「横浜三井ビルディング」をはじめ今後、開発するオフィスビルについて、テナント企業の事業継続や館内での待機に必要な機能や環境を維持する防災スペックの向上を図ることを目的としている。

 その内容は72時間対応の非常用発電機を標準装備すること、停電や上下水道の途絶時にもトイレが使えるようにすること、停電時でも自然換気が行えるように開放可能な窓を設置すること、地震発生時に建物の加速度や層間変形角から被災状況を把握する「建物被災度判定システム」を導入することなどだ。

非常用発電機(写真:三井不動産)
燃料タンクの一部(写真:三井不動産)
非常用発電機(左)と燃料タンクの一部(右)(写真:三井不動産)

 保安設備や上水槽などビル機能を維持する上で重要な設備は、日本建築センターの「2005年版建築設備耐震設計・施工指針」における最高の耐震性能である「クラスS」の仕様を採用し、非常用発電機から電力を供給できるようにする。

 このほか、重視しているのが通信システムの確保だ。非常時には衛星携帯電話や専用線電話、IP電話など、一般回線に依存しない複数の情報通信ネットが使えるようにした。光回線の専用線も導入し、東京・日本橋の本社ビルにある「危機管理センター」と各ビルを結ぶ「TV会議システム」を設置する。

 そしてビル内で働く人々だけでなく、一般の帰宅困難者も可能な限り受け入れる。そのための水や食糧、防寒シートなども備蓄する。

一般回線に頼らないIP電話や衛星回線で通信システムを多重化(写真:三井不動産)
危機管理センターと各ビルを結ぶTV会議システム(写真:三井不動産)
一般回線に頼らないIP電話や衛星回線で通信システムを多重化(左)。危機管理センターと各ビルを結ぶTV会議システム(写真:三井不動産)

訓練中の危機管理センター(写真:三井不動産)
帰宅難民者などに情報堤供するモニター(写真:三井不動産)
訓練中の危機管理センター(左)。帰宅難民者などに情報堤供するモニター(写真:三井不動産)