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「iPadやアンドロイド端末などをあなどってはいけない。クラウドコンピューティングやソーシャルネットワーク・サービスと共に、今後、必ず技術者や建築家の働き方を変えていく」―――米国オートデスク社長兼CEOのカール・バス氏は報道陣にこう語った。その背景には、仕事のスタイルが従来の「パソコン中心」から「あなた中心」へと移行する大きな底流があるという。

 オートデスクでは2010年に、AutoCADのクラウド版である「AutoCAD WS」を無償公開し、以後、バージョンアップを繰り返している。AutoCADを持っていなくてもインターネット回線と普通のウェブブラウザーがあれば同ソフトのオリジナルファイルである「DWG」形式のCAD図面を編集できるほか、無料のアプリをiPadやiPhone、Androidのスマートフォンにインストールすると携帯端末上でも同じようなことができるのだ。

 確かにクラウドやモバイル端末は流行しているが、操作性の点ではパソコンにインストールして使う従来型のCADソフトの方が圧倒的に勝っている。なぜ、同社は多大な投資を行って無料のAutoCAD WSの開発を続けているのかが不思議だった。

 筆書は3月27日に米国サンフランシスコで開催された「Autodesk Media Summit 2012」に参加し、米国オートデスク社の社長兼CEOのカール・バス氏の講演を聴いた。その結果、同社がなぜ、クラウドやモバイル機器の利用に力を入れているのかが分かった。さらにソーシャルネットワーク・サービスも組み合わせることで、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用する設計者や技術者のコラボレーション環境の提供を目指していることも明らかになったのだ。

 「iPadやアンドロイド端末などをあなどってはいけない。クラウドコンピューティングやソーシャルネットワークサービスと共に、今後、必ず技術者や建築家の働き方を変えていく」「仕事のスタイルが従来の『パソコン中心』から『あなた中心』へと移行する」と近未来の潮流を語るカール・バス氏の講演要旨を、以下で紹介しよう。


設計者のワークスタイルがシフトする

米国オートデスク社長兼CEO カール・バス氏

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講演中のバス氏(写真:家入龍太)

 今、ITの世界をけん引している「モバイル機器」「ソーシャルネットワーク・サービス」、そして「クラウドコンピューティング」は、一般消費者向けの流行にすぎないという人もいるが、それは間違いだ。こうした動きの背景にある、ワークスタイルの根本的な「シフト」は、一過性のものではない。これは建築家や技術者の働き方や設計・解析の方法、技術的なデータの作り方と使い方なども、大きく「シフト」していくだろう。

 過去にも大きなシフトがあった。それは大型コンピューターからワークステーションへの移行だ。この「ダウンサイジング」によって、企業のコンピューター環境は大きく作り替えられた。これと同じような大変革が「モバイル」「ソーシャル」「クラウド」によって起こりつつあるのだ。

 5年前、我々の職場はどうだったか。朝、職場に出勤してきてパソコンの電源を入れてから仕事が始まった。職場にはLANや共用サーバーがあり、働く環境を提供していた。つまり、パソコン中心の働き方だ。そしてデータを交換する手段はメールだった。

 「はい、分かりました。それでは会社に戻ったら、データをメールで送ります」というようなやりとりが、大企業から建築設計事務所、町の小さな商店に至るまで、あちこちで行われていた。しかし、このようなパソコン中心の仕事は、「クラウド中心」にシフトしていくだろう。