iPadでBIMは変わる、米オートデスク社長が力説
「パソコン中心から『あなた中心』の仕事へ」
これまでの仕事はパソコン中心だった。しかし、我々が目指すのは、「オフィスに戻ってからファイルを送信する」というものでない。これからはモバイル、ソーシャル、クラウドによってなにごとも「あなたが中心」の仕事スタイルになるだろう。あなた中心のコンピューターの利用、あなた中心のコミュニティー、あなた中心のプロジェクト、あなた中心のコラボレーショングループ、といった具合だ。
モバイル、ソーシャル、クラウドで仕事の環境は「あなた中心」に変わる(資料:Autodesk, Inc.)
モバイル機器、ソーシャルネットワーク、クラウドコンピューティングが組み合わせることで、5年前のパソコン中心の仕事スタイルとは違う世界が開ける。オートデスクは建築家や技術者などが、まったく新しい方法で働ける環境を提供していこうと考えている。
以上が、カール・バス氏の話だ。従来のパソコンにインストールするタイプのソフトウエアに比べて操作性の悪いAutoCAD WSをなぜ、これほどまでに力を入れて開発しているのが不思議だったが、講演内容はその疑問に答えるものだった。彼の話を聞いてクラウドには「無限のコンピューター力」があり、BIMの手法によって効率のよいコラボレーションを実現するためには、今後、ますますクラウドの効果が認知されてくるのではないかと思った。
日本でもBIMソフトの活用が進んでいる企業でよく耳にするのは、意匠、構造、設備の各BIMモデルを1つに統合して扱おうとすると、ファイルの容量が大きくなりすぎて、大容量のメモリーや高性能のグラフィックボードなどを積んだ社内でも“エース級”のワークステーションでしか開けないということだ。
もし、将来、BIMソフトがクラウド上で稼働するようになると、強力なコンピューターによって大容量のBIMモデルでも楽に扱えるようになりそうだ。
現在のところ、Revitなどをクラウドサービスで提供することについてオートデスクはコメントしていないが、AutoCAD WSがかなり実用性を高めていることを考えると、近い将来にクラウド版の「Revit」などが登場する可能性は十分にある。同社のクラウド戦略は、BIMを使ったワークフローの将来が密接に関連していることを感じた。
家入龍太(いえいり・りょうた)

1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、
http://www.ieiri-lab.jp/。
ツイッターやfacebookでも発言している。