「モバイル機器を過小評価すべきではない」

  多くの人々はまだ、モバイル機器やソーシャルネットワーク、クラウドコンピューティングを過小評価している。「こんなものはおもちゃだ」「大して意味がない」「一般消費者向けだ」といった批評が必ずある。しかし、iPadにどれだけのパワーがあるのか考えてみたことがあるか。

 ひと昔前、企業は10万ドル(約820万円)もするワークステーションで仕事していた。現在のiPadの性能は、このワークステーションよりもはるかに高性能なのだ。モバイル機器の性能は18カ月で2倍になる、というような世界だ。

iPadの性能は、ひと昔前のワークステーションより高性能だと語るカール・バス氏(写真:家入龍太)
iPadの性能は、ひと昔前のワークステーションより高性能だと語るカール・バス氏(写真:家入龍太)

 モバイル機器の能力を過小評価するのは間違っている。ゲームなど消費者向けのアプリだけでなく、シリアスな技術計算アプリも動かせる。例えば、自転車を3次元でモデル化し、各部分にかかる力やサスペンションの動きをシミュレーションするようなアプリだ。

 こうした話をしていたところ、ある大学教授から否定的な意見をもらった。「私は宿題を出すのが好きだ。電卓と紙でものの挙動を解析した方がいい」というものだった。しかし私の意見は違う。宿題の目的は、ものの挙動を理解することにある。iPadならものの動きを視覚的に理解でき、設計変更がもたらす影響も即座に分かる。この方が効果的に理解が進むのではないだろうか。

iPad上で自転車各部にかかる力とショックアブソーバーなどの挙動を解析するソフト(資料:Autodesk, Inc.)
iPad上で自転車各部にかかる力とショックアブソーバーなどの挙動を解析するソフト(資料:Autodesk, Inc.)

「無限のコンピューター力を活用可能に」

 モバイル機器と同様にクラウドコンピューティングも重要だ。複雑な解析やシミュレーションなどは、ワークステーションを使っても数時間から数日という計算時間が必要だった。これが強力なパワーを持つクラウドコンピューティング・サービスだと15分とか1時間といった短時間で処理できるのだ。つまり「無限のコンピューター力」を活用できることになる。これは、解析やシミュレーションの世界を大きく変えることになるだろう。

 これまでは解析やシミュレーションを行うとき、計算が終わるまで作業を中断しなければならなかったが、クラウドにその業務を投げておくことで、設計作業を継続できる。クラウドで計算処理ができると、メールで連絡が来て結果を見られるのだ。

長い計算時間が必要な解析やシミュレーションをクラウド化することで、設計者は作業を継続できる(資料:Autodesk, Inc.)
長い計算時間が必要な解析やシミュレーションをクラウド化することで、設計者は作業を継続できる(資料:Autodesk, Inc.)

 そしてオンラインシミュレーションの結果は、パソコンのほか、スマートフォンやタブレット端末など、様々な方法で見られる。これらを通じて情報の交流が生まれる。

 クラウドコンピューティングの意義は二つあると思う。一つは高性能のコンピューターやシステムを使えること、もう一つは人々のコラボレーションに最適なことだ。

 クラウドコンピューティングにも否定的な意見は多い。「子ども向けのおとぎ話だ」「昔のクライアント・サーバー型システムと同じだ」「オートデスクは本気なのか」「絶対に成功しない」といった声だ。

 しかし、オートデスクはクラウドコンピューティングに対して、これまでのシステムとは違う方法で取り組んでいる。古いものの焼き直しではない。仕事を進める方法を再定義しているのだ。