現実の風景の中に3次元CGや画像、テキストなどの情報を重ねて表示する「拡張現実感(AR)」を、スマートフォンや携帯端末で利用するシステムが続々と登場している。その活用分野はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や埋設管の維持管理、防災や町案内まで広がっている。
ArchiSymphony:現場でBIMパーツのスケール感を確認
福岡市のペーパレススタジオジャパンは5月30日、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)での設計に使われる建材や家具などのBIMパーツを効率的に活用できるBIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony(アーキシンフォニー)」のサービスをオートデスクのRevit Architectureのユーザー向けに開始した。
実際に市販されているBIMパーツを、クラウド上のサーバーからドラッグ&ドロップによって、設計中のBIMモデルに張り付けられるものだ。Revit用のプラグインソフトを通してBIMパーツをダウンロードする仕組みだ。
クラウドサービスは同社の親会社であるパイプドビッツが提供するクラウド型ソリューションプラットフォーム「スパイラル」をベースに構築した。
ArchiSymphonyは今後、建材メーカーとの連携を図り、BIMパーツのデータ蓄積を進めていく予定だ。さらに将来は、部材の受発注や設計・施工管理、そしてファシリティマネジメントまで建築生産プロセス全体をカバーするクラウドサービスに進化することを目指している。
ペーパレススタジオジャパンでは、近くArchiSymphonyからダウンロードしたBIMモデルを閲覧できるiPhoneやiPadで動作する「ARブラウザー」を無償公開する予定だ。ダウンロードした家具や住宅用設備などのBIMパーツを、ARによって実際の室内の風景に重ねて見られる機能を搭載しており、家具などを設置する現場でのスケール感を体感できる。
そのため、建築の専門家ではない施主に対してもスケール感を説明しやすくなる。施工が終わってから、施主が「思ったより大きすぎた」と後悔したり、施主から建設会社などへのクレームが来たりすることも少なくなりそうだ。プロの設計者にとっても、周囲の壁紙や床材などと調和する色や柄の建材を選ぶのに役立つだろう。