JIA(日本建築家協会)が「BIMガイドライン」を公開した。設計者の視点でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用し、業務を行っていくためのポイントをまとめたものだ。BIMの本当の効果を発揮するために、設計者の職能は従来の設計段階にとどまらず、施工や維持管理にまで踏み込むことが重要と説くBIMガイドラインには、これからの設計者が担うべき新職能の姿が描かれている。


 7月19日、JIAのIPD-WG(設計環境改革委員会IPDワーキンググループ)が「BIMガイドライン」を公開した。約5年間にわたりBIMとの関わり方を模索してきた成果だ。

JIAのIPD-WGが公表したBIMガイドライン(資料:JIA、写真:家入龍太)
主査を務める藤沼傑氏(資料:JIA、写真:家入龍太)
JIAのIPD-WGが公表したBIMガイドライン(左)と主査を務める藤沼傑氏(資料:JIA、写真:家入龍太)

 IPD-WG主査を務める藤沼傑氏(山下設計)や前主査の木村年男氏(元梓設計)は、BIMの特別セッションが2日間にわたって行われていた2007年のアメリカ建築家協会(AIA)の全米大会に参加するなど、早くからBIMの可能性に着目していた。

 そしてJIAのIPD-WGは設計者としてBIMにどう取り組むかを考えるセミナーを何度も開催してきた。その中で、BIMの特性と設計者の職能の関わりについて、WGのメンバーは悩み続けた。

 というのは、企画、設計から施工、維持管理へと一貫して建物のBIMモデルを引き継ぐことにより生産性向上を図るBIMは、設計や監理業務だけを担う建築設計事務所より、建設会社による設計施工一貫方式の方がBIMのパワーを生かすのに向いているからだ。極論すれば、BIMが普及することにより、下手をすると建築プロジェクトにおける建築設計事務所の主導権は、建設会社に奪い取られてしまいかねないのだ。

 今回、JIAが公表したBIMガイドラインは、IPD-WGがこれまで検討を重ねてきたBIMに対する取り組みや考え方を集大成したものと言えるだろう。

 私はこのガイドラインから「設計者の職能拡大」「IPDの推進」「BIM組織のあり方」「BIMモデルの活用」「設計者の報酬」という5つの大きなポイントを読み取った。それぞれのポイントからBIMに対して前向きに取り組み、建設プロジェクトの進め方を改善したいという設計者からの提案が込められているように感じたのだ。以下、5つのポイントについて私の見方を紹介したい。

ポイント1:設計者の職能拡大

設計者が「建設計画」に踏み込むことの重要性

 ガイドラインでは、BIMの機能を設計与条件の確定から設計内容の確定までの「設計計画」と、設計内容を施工者に伝達し実際の建物を建設する「建設計画」に分けて考えている。

 前者は企画設計から基本設計、実施設計までの職能を意味し、後者は概算から実施設計、積算、入札、工事監理を意味する。

 ガイドライン序文(2ページ)では「日本の設計者は、これまで施工における工法検討、工程管理、品質管理、財務管理などの建設計画についてはあまり詳細に係わってこなかった」と設計者の実情がつづられている。

 その一方で、「(BIM活用の)効果は、設計者が建設計画にも業務を拡大し、コストや施工の情報を取り入れた設計を行うことで初めて可能となる」と、BIM時代には設計者が施工段階まで関わるべきであることを示唆している。

 そして、施工段階の問題点を設計段階で解決する「フロントローディング」による設計者の負担や新しい価値に対して評価や報酬のあり方はどうあるべきかについての課題を具体的に示している。