「主要大学にBIM研究センターを設置」「BIMを活用した廃棄物管理システムを開発」―――8月3日、東京・芝で開かれたアジア建設IT円卓会議の記念講演会で、アジアの6つの国や地域の研究者が各国におけるBIM活用動向を報告した。欧米中心の国際会議と異なり、気候や風土が似たアジアでのBIM活用情報は一段とリアルだ。それだけに、教育や行政などにおけるBIM活用においては日本の遅れも目立った。アジアの動向を知ることで、日本でのBIM活用のこれからを考えるためのヒントを得られるのではないだろうか。

香港:BIMをライフサイクルでの廃棄物評価に活用

香港科学技術大学土木環境工学科、ジュン・シャン・クワン教授(写真:家入龍太)
香港科学技術大学土木環境工学科、ジュン・シャン・クワン教授(写真:家入龍太)

 鉄道や道路、都市開発などの巨大プロジェクトが進む香港では、1日に1万3800トンもの廃棄物が発生し、その4分の1を建設廃棄物が占める。香港にある3つの埋め立て地は、2018年までにすべて満杯になる予定だ。

 そのため、廃棄物の抑制が課題となっているが、土木インフラ事業の増加による建設や解体工事からの廃棄物は依然として多い。

 「現在、BIMで建物の効率やエネルギー消費量のシミュレーションが行われている。しかしエネルギー効率の高い建物でも、建設前や使用後の解体で消費するエネルギーを考えると必ずしも環境に優しいとは言えない」と香港科学技術大学土木環境工学科のジュン・シャン・クワン教授は言う。

 そこでクワン教授が研究しているのが建物のライフサイクルにわたって発生する廃棄物をBIMで予測するシステム「BIMによる廃棄物とCO2のライフサイクル管理システム(BIM-Based Lifecycle Assessment Framework for Waste and Carbon Management)」だ。

 「現在の廃棄物やCO2、エネルギー消費の評価は建設プロセスの各段階で別々に行われており、自動化や詳細化が進んでおらず不便だ。そこでBIMを使うことを考えた」とクワン教授は説明する。

「BIMによる廃棄物とCO2のライフサイクル管理システム」の概要(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)
「BIMによる廃棄物とCO2のライフサイクル管理システム」の概要(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)

 「BIMによる廃棄物とCO2のライフサイクル管理システム」は次の3つの特徴がある。(1)BIMによって建設・解体時の廃棄物を定量的に管理する、(2)BIMによるCO2排出量を定量的・詳細に管理する、そして(3)CO2と廃棄物を統合的に管理することだ。

 同管理システムのサブシステムとして、廃棄物の種類や発生量を算出するため、米国オートデスクのBIMソフト「Revit Architecture」と連携する外部ツールを開発した。BIMモデルから解体時に発生する廃材の種類や搬出用のトラック台数、廃棄物処理にかかる費用などを自動的に計算できるようにした。

 BIMモデルから部材の材質に関する情報を取り出し、材料のデータベース情報とつき合わせて、CO2排出量やエネルギーを評価する仕組みだ。

 このシステムにより、原材料の製造から加工・製作、そして現場への運搬といった各段階でのCO2排出量とエネルギーが詳細に分析できる。

Revit Architectureと外部ツールを連携させて開発したシステム(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)
Revit Architectureと外部ツールを連携させて開発したシステム(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)

講演会場の風景(写真:家入龍太)
講演会場の風景(写真:家入龍太)