中国:行政主導で建設業界の情報化が進展

精華大学土木工学科の馬智亮教授(写真:家入龍太)
精華大学土木工学科の馬智亮教授(写真:家入龍太)

 2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博以降も、中国の建設市場は毎年20%を上回る成長を続けている。過去10年間、中国の建設業界でもBIMをはじめとした情報技術が幅広く進展した。

 「北京オリンピックのスタジアムや、上海万博のパビリオン建設では、BIMによる共同設計や干渉チェック、環境設計のほか、火災や避難の数値シミュレーションなどの技術が使われた」と精華大学土木工学科の馬智亮教授は説明する。

2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博以降も伸び続ける中国の建設市場(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)
2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博以降も伸び続ける中国の建設市場(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)

上海万博のパビリオン建設では、BIMが活用された(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)
上海万博のパビリオン建設では、BIMが活用された(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)

 中国の建設分野における情報化を支える原動力になっているものは5つある。その主軸となっているのは、行政からの働きかけだ。

 まずは原動力1「行政指導」だ。中国では政府に頼る企業が多く、政府に従って行動すると有利になるため、政府の指導が大きな効果を発揮するのだ。

 例えばこの10年間に行われた政府による指導は、2001年の「建設分野情報化に関する工作要綱」、2003年の「2003~2008全国建設業情報化発展計画要綱」、2007年の「調査と測量分野における科学進歩に関する計画」などがある。

 2011年の「2011~2015建設業情報化発展計画要綱」には、適用する最新技術の項目に「BIM技術」がうたわれている。

中国の建設業界におけるIT化を進める5つの原動力と効果(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)
中国の建設業界におけるIT化を進める5つの原動力と効果(資料:アジア建設IT円卓会議記念講演会より)

 原動力2「行政による研究プロジェクト」では5年計画で行った研究の結果を実際のプロジェクトで使用することを求めている。そのため実用的な技術を開発し、普及していく。

原動力3「大型公共プロジェクト」では設計や建設プロセスも含めて技術イノベーションが要求され、国家技術進歩賞なども与えられる。そのため、新技術が普及しやすい。前述の北京オリンピックや上海万博でBIM活用が進んだのも、政府からの要件が技術イノベーションを要求していたからだ。

 原動力4「行政要求」は、最も強制力があるものだ。行政には権力があり、その要求に従わなければ企業はやっていけないからだ。その成果の一例が、2007年に建設部が特級ゼネコンに対して出した情報化の要求だ。2010年までに基準を満足しなければ、「特級」の資格を取り上げる、というものだった。

 この期限は金融危機によって2年間延長されたものの、結局264社のほぼすべてが合格した。

 最後の原動力5「自発的技術発展」は、市場のニーズにこたえてベンダーが開発した情報システムを、企業や政府が導入するというものだが、ほかの原動力に比べると最も成果が出ていないと言えそうだ。