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建設ICT実験棟(大成建設)

電磁シールドで覆われた実験施設を新設

 東日本大震災以降、復興事業や原発事故の対応などで、建設会社に対するニーズは従来より高機能・高付加価値の方向に変わりつつある。そこで大成建設は研究開発拠点の技術センター(神奈川県横浜市)を強化するするため、5カ年計画で新しい施設の建設や増強を7月から始めた。

 新設される施設の中には、「建設ICT実験棟」も含まれている。遮断電磁シールドで電波が外界に漏れないようにして、多目的な実験を行う施設だ。電波法の制約を受けずに、人が立ち入ることのできない環境下で解体・撤去などを行うための機械化施工や遠隔施工技術を開発できる。原発事故の後処理を実現するためには、欠かせない施設になりそうだ。

建設ICT実験棟(資料:大成建設)
建設ICT実験棟(資料:大成建設)


震災復興を新市場と技術の開発に生かそう

 東日本大震災の復興が急がれるなか、ITと建設技術の融合によって、建設業界には新しい市場が開けるとともに、技術自体もさらに磨かれ、建設プロジェクトにも役立つことになるだろう。

 例えば、産業廃棄物などの処分における電子マニフェスト制度は、1998年度に既に始まっていたものの、建設業界ではあまり普及していないどころか、電子マニフェストの存在すらもあまり知られていなかった。

 そうした中で、今回紹介した「廃棄物統合管理システム」(奥村組とCTCが開発)では、7枚つづりの紙の伝票として知られているマニフェストを電子化している。この廃棄物統合管理システムは、建設業の廃棄物処理業務が進化するきっかけになるかもしれない。最近はGPS機能付きの情報端末やQRコード、そしてクラウドコンピューティングが各業界で当たり前のように使われている。これらのシステムと組み合わさることで、電子マニフェスト制度はぐっと使いやすくなる。

 一方で、震災直後にアクセス道路を切り開くなど、建設業界は大きな貢献をしたにもかかわらず、自衛隊や米軍に比べるとあまり報道されなかったという教訓がある。

 今、情報化施工技術や無人化施工技術が、地盤の除染や原発事故の後処理に使われている。建設業でつちかった技術が被災地の復興を加速することに役立っているのだ。こうした事実を、世間に向けて意識的、継続的にPRしていかなければ、建設業界の貢献は世の中に知られないままだ。ITを生かした建設業の新しいビジネスを広げるためにも、こうした貢献をもっとアピールしていくことが必要だろう。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。