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「日本のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)元年」と言われる2009年から今年で早くも5年目となり、BIMの課題は技術的なものから経営的なものへとシフトしつつある。いま、BIMを企業や発注者の利益につないでいくための経営戦略や心構えが求められている。そこで、7000回以上の講演実績や90冊近くの著書を持つ社会教育家、田中真澄氏が説いてきた「経営者の心構え」から、BIMで成功するための「7つの心構え」を考えてみた。

 ウチの会社はBIM活用が進んでいて、顧客からはBIMについての問い合わせが多くなってきた。しかし、それが業務の受注になかなかつながらない。どうしたらいいものだろうか――先日、ある建築設計事務所の幹部からこのような相談を受けた。

 その設計事務所のBIM活用技術は、業界トップクラスと言っても過言ではない。BIMを使いこなす技術には自信があるが、BIMを自社の業務受注にどう結びつけ、収益を上げていくかが現在の課題になっているのだ。

技術から経営へとシフトするBIMの課題

 BIMの課題が技術面ではなくなってきていることを象徴するのが、インターネット上で昨年秋にIAI日本が開催したBIMの仮想コンペ「Build Live Chiba 2012」であろう。

 毎年開催されてきた「Build Live」では、2009年から2011年までは意匠や構造、設備の設計、様々な解析、そして施工シミュレーションまでをBIMで一貫して行う「フルBIM」を追求するチームが少なからずあった。しかし、2012年に行われた「Build Live Chiba 2012」では、フルBIMそのものを目指すチームは皆無になったのだ。

フルBIMを追求するチームがゼロになったBIM仮想コンペ「Build Live Chiba 2012」。参加した前田建設工業中心のチーム「スカンクワークス」(左)と、大林組中心のチーム「Chain-Diver」(右)の様子(写真:家入龍太)
フルBIMを追求するチームがゼロになったBIM仮想コンペ「Build Live Chiba 2012」。参加した前田建設工業中心のチーム「スカンクワークス」(左)と、大林組中心のチーム「Chain-Diver」(右)の様子(写真:家入龍太)

 「Build Live」でフルBIMを目指さなかった理由として、あるチームのリーダーは「フルBIMへの取り組みは2011年のBuild Liveまででやり尽くした。やろうとすればできることはもう分かった」と語った。

 これは、日本のBIMの課題が、技術から経営へとシフトしつつあることの表れだろう。そんな時、社会教育家である田中真澄氏が日ごろ講演や著書で説いている経営者の心構えが、BIMの世界にも通じるのではないかと思った。

田中真澄氏の著書や日めくりには、BIMの活用に参考になる「経営者の心構え」が随所にある。(写真:家入龍太)
田中真澄氏の著書や日めくりには、BIMの活用に参考になる「経営者の心構え」が随所にある。(写真:家入龍太)

 田中氏は1969年に日経BP社(当時は日経マグロウヒル)で「日経ビジネス」の立ち上げに参画した後、40代前半の働き盛りだった1979年に独立。以来、企業や団体などを対象に「積極的に生きる」をテーマに7000回以上にもわたる講演や、90冊近い著書を執筆してきた。BIMの経営的側面が重要になってきたいま、田中氏の教えは大いに参考になりそうだ。 田中氏の言葉をBIM活用の心構えに当てはめてみよう。

田中真澄氏の言葉(1)
「地味にコツコツ泥臭く、一点集中コツコツ コツコツ」
BIMの心構え●教育編
「成功曲線を意識して、辛抱強くBIMに取り組め」

 これまでの2次元図面による設計に慣れ親しんできた設計者が、建物の3次元モデルをベースに設計するBIMに乗り換える時に問題になるのが、BIMならではの生産性向上を享受できるようになるまでの時間が長く感じられることだ。

 努力してBIMに取り組んでもなかなか上達せず、時間ばかりが過ぎていって成果が上がらない状況が続くと、「やっぱり、昔のやり方の方が効率的だ」とBIMへの挑戦を投げ出してしまう人も多いのではないだろうか。

 そこで参考になるのが「成功曲線」という経験即だ。目標を持って初めてもなかなか成果は上がらないが、懸命に努力を積み重ねていくうちに、ある時、突然急激に成果が上がり始めるというものだ。

(資料:家入龍太)
(資料:家入龍太)

 この成功曲線を見て連想したのが、安井建築設計事務所が自社の経験を基に作ったBIMのラーニングカーブだ。BIMソフトの操作を学び3Dモデルを作れるようになる中級レベルまでと、BIMのモデルから実施設計用図面を作れるようになる上級レベルまでの上達カーブが、それぞれ成功曲線のカーブに似ていることが分かる。

安井建築設計事務所が作成したBIMのラーニングカーブ図は「成功曲線」と似ている(資料:安井建築設計事務所)
安井建築設計事務所が作成したBIMのラーニングカーブ図は「成功曲線」と似ている(資料:安井建築設計事務所)