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住宅の建設に向けて材料も開発中

 このように、彫刻や家具、人工サンゴ礁などの製作では実用に供しているD-SHAPEだが、冒頭のランドスケープハウスの建設に使うとなると課題もある。2011年当時、材料のDサンドに砂を70%混ぜた標準的な材料の圧縮強度が約15N/mm(約150kg/cm2f)と、建物の構造部材として使用するにはやや強度が弱かったからだ。

 エンリコ氏は「ジオポリマーという物質を使って、改良した材料を開発している。しかし、現段階では詳しいことは言えない」とコメントしている。

 D-SHAPEで造形できるサイズは6m立方程度なので、住宅を建設するとなると小さなブロックに分けて造形したものを組み立てていくことになるだろう。例えば、プリンターの造形サイズを超える彫刻の場合、ブロックの内部に穴を開けておき、ここに補強材を通してプレストレスト・コンクリートのように締め付けるなどの方法で組み立てることも可能だろう。

造形サイズを超える彫刻をブロックで作成している例(写真:家入龍太)
造形サイズを超える彫刻をブロックで作成している例(写真:家入龍太)

ブロックには補強材を通す穴が造形されている(写真:家入龍太)
ブロックには補強材を通す穴が造形されている(写真:家入龍太)

 ランドスケープハウスの場合、どのように分割し、組み立てて行くのだろうか。この件について、設計者のライッセンナールス氏に問い合わせたところ「現段階ではブロック割りなどについては決めていない」という答えが返ってきた。詳細はこれから詰めていく段階のようだ。

 工法以外にも課題はありそうだ。D-SHAPEを開発したエンリコ氏は「そんな勇気のある施主を見つけるのは、それほど簡単ではない」とコメントしている。世界初となる巨大3Dプリンターで建設された住宅が実現するかどうかは、施主が見つかるかどうかにかかっている。

ランドスケープハウスの完成予想図(資料:Janjaap Ruijssenaars, Universe Architecture)
ランドスケープハウスの完成予想図(資料:Janjaap Ruijssenaars, Universe Architecture)

 エンリコ氏はフォスター+パートナーズ(Foster + Partners)が欧州宇宙機関(ESA)とともに発表した月面基地の建設構想にも参加している。真空室の中で月面基地を覆う中空部材の造形にも成功した(2013年3月6日のケンプラッツの記事参照)。D-SHAPEは、今後、建設機械としても実用化が進んでいきそうだ。

真空室脇に立つエンリコ・ディニ氏(写真:Enrico Dini)
真空室脇に立つエンリコ・ディニ氏(写真:Enrico Dini)

 3Dプリンターで様々な形状の部材が型枠なしで作れるようになると、一品生産も大量生産もコストは大きくは変わらなくなる。これまで、コストという制約条件によってしばられてきた建物のデザインの自由度は大幅に上がることになる。そうなると、建築設計の分野では、これまで以上にBIMや3次元設計が必須になりそうだ。

家入龍太(いえいり・りょうた)
家入龍太(いえいり・りょうた) 1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。