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ポイント7:成功への意思――阪大・矢吹教授のコラム「CIMは成功するか」に注目

 報告書の末尾にある「提案と今後の方針」では、技術開発のロードマップや3Dソフト、測量、情報化施工、センサーなどの技術開発項目のほか、国交省の情報化施工推進戦略や土木学会との連携が挙げられている。

 また、制度基準に関する提案としては、CIMを導入する上でのインセンティブや費用、現場の実情に沿った基準の運用、施工者のフロントローディングによる設計への反映に関する提案などが盛り込まれている。

 基準や規格、技術の個別の整備だけに終わらせるのではなく、CIMによって建設業の生産性を高めるための総合的な提案となっているのがCALS/ECにはなかった視点と言えるだろう。この報告書には、大阪大学大学院の矢吹信喜教授による「CIMは成功するか」というコラムページが設けられている。

大阪大学大学院の矢吹信喜教授(右写真中央)によるコラム「CIMは成功するか」(左)(写真:家入龍太、資料:JACIC)
大阪大学大学院の矢吹信喜教授(右写真中央)によるコラム「CIMは成功するか」(左)(写真:家入龍太、資料:JACIC)

 このコラムで矢吹教授は「CIMは大局的に見て失敗せず、長い目で見れば将来、成功であったと評価されるだろう」と述べている。

 その理由として、(1)機械分野が3次元CADによる設計、解析、製造などで成功し、建築分野もBIMで成功しつつあること。(2)設計の方法として第三角法の図面が標準的になったのはここ数十年で、今度は3次元CADに変わろうとしている。CIMもこの歴史的な流れに沿っていること。(3)国際的にも橋梁や道路等の土木分野で3次元CADが使われるようになっており、CIMも日本独自の動きではなく各国の動向に近いこと。を挙げている。

 報告書と言えば、理屈やデータなどの「客観データ」だけで構成されたものが一般的だ。しかし、矢吹教授のコラムはある意味、主観的な情報だ。あえて報告書に掲載することで、他産業の技術動向を含め、大局的な見地から「CIMを成功させたい」という熱意が感じられる。

 CIMのビジョンを描くリーダーが自分の言葉で、「CIMを成功させよう」と呼びかけることは、CIM導入の初期にありがちな苦労を関係者が一体となって乗り越え、成功に結びつけるために大きな力になりそうだ。

家入龍太(いえいり・りょうた)
家入龍太(いえいり・りょうた) 1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。