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時間とともに変形する土木構造物の維持管理

 一般的に建築物の場合、建物を定義するのに敷地内のどこかに原点を持つローカルな座標系があれば設計や施工、維持管理の業務は行えるだろう。

 しかし、道路や鉄道など長大な土木構造物の場合は、公共測量の座標系との関連が非常に重要だ。「橋の上部工はローカルな座標系で設計され、下部工は公共測量の座標系で設計されている。支承の位置など、両者の接点となる部分の座標を求めるとき、座標系が違うといろいろな問題が出る」と青山氏は指摘する。

 また、土木構造物は完成後の変位や変形の管理の重要項目だ。橋脚や盛り土は年月とともに沈下し、トンネルの内壁は形状の変化やひび割れが発生する。道路の路面も陥没やわだち掘れなどが発生する。こうした経時変化を点や面で管理していかなければならないのも、土木構造物ならではの課題だ。

3Dレーザースキャナーによるトンネル内壁の計測(資料:国総研)
3Dレーザースキャナーによるトンネル内壁の計測(資料:国総研)

3Dレーザースキャナーで計測した点群データ(左)とひび割れ位置の解析(右)(資料:国総研)
3Dレーザースキャナーで計測した点群データ(左)とひび割れ位置の解析(右)(資料:国総研)

 国総研は2012年9月に「橋梁3次元データ流通に係る運用ガイドライン(案)」を公表した。このガイドラインでは施工ミスを防止するための施工の基準となる位置座標として「構造物設置基準点」を、地震などで構造物が損傷を受けた場合に早期に状況を把握するために「監視基準点」を置くこととしている。

 こうした公共測量の座標系と連携した施工や維持管理用の座標をきちんと定義し、属性情報として管理することもCIMならではのニーズと言えそうだ。

橋梁の施工ミスをなくすために定める構造物設置基準点(資料:国総研)
橋梁の施工ミスをなくすために定める構造物設置基準点(資料:国総研)

地震時などに損傷を早期に把握するために設ける「監視基準点」(資料:国総研)
地震時などに損傷を早期に把握するために設ける「監視基準点」(資料:国総研)

 このほか、施工中の数量計算でも細かいところで問題が出てくる。その典型的な例は土だ。同じ土でもその体積は、もとの地山にあったときの「地山土量」と、掘削してほぐしたときの「ほぐし土量」、そして盛り土して締め固めたときの「締め固め土量」と異なる。

 土の体積が状態によって異なるという問題は切り土、盛り土がバランスする道路のルート選定や運土量を最小にする施工計画などにも関わってくる。同じ材料でも施工段階によって体積を補正しなくてはならないのだ。

 橋梁、トンネル、土工と、土木構造物には構造や機能が大きく異なるものがいろいろとある。しかし、道路や鉄道を1つの土木インフラとして設計、施工、維持管理を行う場合、異なる種類の土木構造物を、1つのCIMモデルにまとめて扱う必要がある。このように、CIMには土木構造物の多様さや使用材料の性質と量による複雑さや難しさが、いろいろな面で出てきそうだ。